リモート連句の場
第十回猫蓑会リモート
二十韻「煉羊羹」
大島洋子 捌
- 新涼や二センチに切る煉羊羹
- 洋子
- 上がり框にるると邯鄲
- 桜千子
- 閂を外す良夜の影ならん
- あき子
- 庁舎の前で停めるタクシー
- 転石
ウ
- ありがとうそのひと言の距離微妙
- 桜
- 看護師は皆笑顔可愛く
- 洋
- 国境に帰らぬ人を待ち続け
- 石
- 小指の赤い糸は結ばれ
- あ
- ちゃんちゃんこ背守り大き亀甲紋
- 洋
- 冬至南瓜を馬車に見立てて
- 桜
ナオ
- 遠出して島原巡り深呼吸
- あ
- 故郷の空しのぶカピタン
- 石
- スマホにはロマンス詐欺のトラップが
- 桜
- 日焼けの胸に顔を埋める
- 洋
- 素袷の若衆漕ぐは月の舟
- 石
- 蔵の奥ではジャズと珈琲
- あ
ナウ
- リノベーションアドリブ少しきかせつつ
- 洋
- うららの便り長き蘊蓄
- あ
- 花万朶十戸の村の花の宴
- 桜
- 団扇作りは家族総出で
- 石
連衆 鵜飼桜千子 岩崎あき子 林転石
二十韻「飛騨の里」
鈴木千惠子 捌
- 秋涼し円空仏の飛騨の里
- 美智子
- 小さき祠は月影の中
- 徹心
- 朋友へ鮭の燻製手土産に
- 濤声
- 下駄を鳴らして上る坂道
- 言也
ウ
- ゆるゆると検査結果を聞きに行き
- 千惠子
- データ重視の恋の作戦
- 声
- 色の道負けに不思議の負けはなく
- 也
- 五線譜に書く思ひ出の曲
- 智
- 乾杯は布哇の浜の地麦酒で
- 声
- 裏返りつつ水くらげ来る
- 智
ナオ
- 足早に小雨小路をだらり帯
- 心
- 暖簾わけたらのつぺらぼうが
- 也
- マスクつけGO TO EAT賑はへり
- 声
- 逢へない人がさらにいとしい
- 千
- あなたへの艶文(つやぶみ)照らす夏の月
- 也
- 心もとなき蜘蛛の細糸
- 心
ナウ
- パソコンの誤操作画面真つ黒に
- 千
- 袖たくし上げ籠にクレソン
- 心
- 人の手の届かぬほどの花大樹
- 声
- 忘れられない野遊びの午後
- 也
連衆 聖成美智子 佐藤徹心 小原濤声 吉丸言也
二十韻「風切羽を」
本屋良子 捌
- 二百十日風切羽を拾ひけり
- 良子
- 月上りくる古里の丘
- 敏枝
- 頂に金木犀の香りゐて
- 了斎
- 図書館へ本返し忘れる
- 敦子
ウ
- 趣味の絵が思ひもかけず入賞し
- 枝
- 友の乗りこむパリ行の便
- 良
- 明滅に戦乱兆す冬銀河
- 斎
- 盲導犬は身じろぎもせず
- 枝
- 官僚の妻の内助の勇ましく
- 敦
- 涙流した方が負けです
- 純子
ナオ
- またしても私の恋は汗まみれ
- 斎
- いつまでも揺れ止まぬ吊り床
- 良
- 先づ酒と遠来の客大声で
- 枝
- 鎌倉殿に首を斬らるる
- 斎
- 虚無僧の尺八を聞く冬の月
- 純
- 泥鰌掘りにも慣れたこのごろ
- 枝
ナウ
- 思ひ立ち新規事業の主となり
- 純
- 鴬餅の凹み愛らし
- 枝
- 初花の莟めばすぐに緩む空
- 斎
- くねくね歩く遠足の子等
- 敦
連衆 箭内敏枝 鈴木了斎 武井敦子 近藤純子
二十韻「卑弥呼の空の」
由井健 捌
- 稲雀卑弥呼の空の広かりし
- 健
- ぼんやり浮かぶ八月の月
- 香織
- 翌日の運動会の準備して
- をんみ
- 靴も洗ヘるクリーニング屋
- 鄭和
ウ
- 自転車で世界一周五年越
- 裕介
- 傘借りたのがそもそもの縁
- 健
- 睦言を聞かぬふりするブルドッグ
- 織
- 金継ぎの皿からつぽのまま
- み
- 光琳忌墨付きの紙見当たらず
- 和
- ぐつと飲み干す本場泡盛
- 介
ナオ
- 輪になつてかごめかごめと地蔵尊
- 健
- スマートレジを採用の店
- 織
- アバターの面接官が美男子で
- み
- けとばし食べる彼を食べたい
- 和
- 満月は冬の余情を留めをり
- 介
- 沁みる夜汽車で望む山稜
- 健
ナウ
- 榛名湖のシャッターチャンス待ち続け
- 織
- 若人の夢やがて芽吹くか
- み
- 本舞台役者変化の花の笑
- 和
- 畳に映る蝶々の影
- 介
連衆 平林香織 福澤をんみ 高山鄭和 和田裕介