猫蓑会会長 鈴木千惠子

連句(俳諧の連歌)の魅力は、世界でも稀な共同制作で生み出される文芸という点にあるでしょう。その場を推進していくのは、付けと転じです。付けということを考えるときに、虚心坦懐に前句と向き合っているだろうかということを、自他ともに考え直してみたいと思います。当然すぎることですけれども、前句に付けるという基本に今こそ立ち戻りたいと考えています。転じの問題も同様です。打越をしっかりと読み込むことによって、前句に付いているけれども、鮮やかに転じているということが可能になるのではないでしょうか。

「許六離別詞」の「古人の跡を求めず、古人の求めたる所を求めよ」を再度掲げたいと思います。季題配置表にあるからではなく、何故そのような配置が〈例〉としてありうるのか。式目にあるからではなく、何故そのようなことが式目として成立しているのか、そこで大切にされているものは何なのか。そのようなことを追求する一人ひとりの自覚的な取り組みに期待します。

明雅先生は、宗砌の連歌十徳や斎藤徳元の俳諧五徳を受けて、講演会などで連句三徳を話されています。それは、一、健康で長生きできる。二、頭が惚けない。三、友達が多くできる、です。その中でも特に三に注目したいと思います。連句の連衆は「従兄弟よりも親しい」と言われています。親交を深める中で生まれる文芸なのですから、いつでも連衆が快く巻けるようにお互いに心掛けたいものです。訪れた方が、温かさを感じられるようなそんな猫蓑会でありたいです。もちろん、みなさんと一緒に健康で長生きをして、会を発展させていきたいとも考えています。

「猫蓑通信」第119号
令和5(2023)年1月15日刊 より抜粋