令和5年8月11日(金)

第十六回猫蓑会リモート

半歌仙「門火かな」

石川葵 捌
一瞬の静寂生まるる門火かな
月を招かむ東の峰
純子
栗飯を釜にほつこり炊き上げて
暁巳
兄弟喧嘩ちよつとお預け
をんみ
今後とも行方気になる名人戦
揺子
鷺草活ける床の竹筒
ごきぶりがゐたと背中に齧り付き
十年越しで狙つてた彼
念のため出会ひアプリは続けよう
内緒で僧は鬘購ふ
紫禁城月下の影の冴え冴えと
平和を願ひ浸かる冬至湯
飛入りでゲイプライド※に参加して
腰痛こらへ坂道を行く
緩やかに年を重ねて孫数多
山の笑ひを犬は聞くなり
花筏渦の変はり目おもしろく
友と乾杯春雨の窓
連衆 近藤純子 島村暁巳 福澤をんみ 上原揺子

※LGBTプライドの意

二十韻「神の道」

鈴木了斎 捌
真ん中は神の道なり秋茜
了斎
一面蕎麦の花の満開
転石
十六夜の大黒柱磨くらん
あき子
ぐづる赤子をあやしあぐねる
志保子
アンパンマンばいきんまんもTシャツに
銀河
尾を曳くやうに飛ぶ打球音
旅に出る連れは賢治と朝風と
酒少々で足りる人生
お決まりのヒグマ警報今日もまた
キラウエア山にいつもマグマが
ナオ
舵を切る漁師は天の星を見て
板に刻んだ絵文字解読
お宝は家の蔵から現るる
汗の逢引いつも暗がり
帰るのはいややとすねる夏の月
機織る音のひびく川沿ひ
ナウ
巴里目指す少年達のブレイキン
手話うららかに奔放な夢
あの山の先まで花を咲かせたい
影軽やかに青き踏む人
連衆 林転石 岩崎あき子 北龍志保子 中谷銀河

半歌仙「寝返りて」

佐藤徹心 捌
寝返りて夢の続きへ萩の風
佐藤徹心
生姜を刻むキッチンの音
小原濤声
名優は三日月の眉描くらん
平林香織
膝を崩して珈琲を飲む
室房子
農道をそれぞれに牛帰り行く
箭内敏枝
麦わら帽子引つかかる枝
初めての油絵に画く皐月富士
教授の指導やたら細かく
彼のためミニスカートをはいたのに
蓼食ふ虫も恋もすきずき
背の灸我慢比べの男ぶり
別府地獄のあとに一献
ミネソタは湖も凍結してゐます
益々黒き寒鯉の影
冬月に交響曲は二楽章
待ち遠しきは次の引越
折紙と花に囲まれ祝ふ街
母子うららにホップステップ
執筆
連衆 小原濤声 平林香織 室房子 箭内敏枝

二十韻「仁王立」

大島洋子 捌
今日もまた仁王立する残暑かな
洋子
学園通り酔芙蓉咲く
敦子
居待月香を燻らせ招くらん
照子
折紙細工飾る玄関
千惠子
代々のこけし人形譲り受け
白山
首のすわりのいまいちな吾子
入籍は洗礼式を終へてから
ボランティアには力持ちゐて
ゆるキャラが餅を搗いてる商店街
冬至南瓜はもう喰ひ飽きた
ナオ
西郷どんも好む大島紬なり
赤のリードで犬のお散歩
裏参道厚き恋文手渡され
洗ひ髪して待ち合はせする
七賢と酒酌み交はす夏の月
風わたりゆく水墨の山
ナウ
宝物隠した場所がわからない
海苔干す人の遠く近くに
鈍行のひと駅ごとの花の旅
蝶のゆらゆら天下泰平
連衆 武井敦子 五郎丸照子 鈴木千惠子 由雄白山