令和4年12月10日(土)

第十二回猫蓑会リモート

二十韻「切株は」

箭内敏枝 捌
切株は夫の腰掛小六月
敏枝
前をゆつくり過る冬蝶
美智子
カンバスにさつと自画像描き上げて
陶器の鉢が窓辺彩る
純子
鍵開ける間にもうつろふ今日の月
女心を攫ふ爽籟
藁塚の藁にまみれて密事
ピアスはずした跡を甘噛み
イタリアへオペラの夢はすてきれず
何処で鳴るやら響く鐘の音
ナオ
子らは皆都会暮らしよ古簾
月光の下西瓜割りする
マンホール蓋をくぐれば秘密基地
枕絵もたせ姫の輿入れ
さまざまな恋を捨て今尼御前
ペットボトルが転がつてくる
ナウ
白寿てふ楽しき宴の祝酒
木の芽田楽家ごとの味
花の昼乾御門を通り抜け
波打際に磯菜摘む影
連衆 聖成美智子 由井健 近藤純子

二十韻「霜の菊」

髙山鄭和 捌
猫蓑や凜として咲け霜の菊
鄭和
鶴来る野の息吹切実
転石
稀覯の書古本市で探すらん
揺子
手織の紬風合の良く
志保子
月光に香聞くひとの嫋やかに
青菜の虫が好きな姫君
響きたる地芝居の笛確かにて
ぐづる児に読むトイストーリー
宇宙へと連れ行く友を募ります
満洲国の夢の様様
ナオ
大発会当たり外れも運のうち
出初式には酒と木遣で
市長来て今度もどうぞよろしくと
中身不明の厚き封筒
夏の月ティンカーベルの宙返り
気を若くして喜寿の筋トレ
ナウ
神主と坊主に頼む後始末
流した雛を片付ける人
花のもと子等生きいきと遊びをり
春の城址を渡るそよかぜ
連衆 林転石 上原揺子 北龍志保子

源心「枯荻の白」

岩崎あき子 捌
枯荻の風に耐へたる白さかな
あき子
いつも決まつて日記買ふ店
千惠子
耳近く流行りのロック聞こえきて
良子
石段駆ける野球部の子等
敦子
百年の鳥居にかかる宵の月
木葉山女を君に振舞ふ
密通をおかめこほろぎ覗きをり
オートクチュールのスーツ長押に
金継が景色となれる青磁壺
真贋のほど見抜く鑑定
体中どこに触れても悪知恵が
再放送を楽しみに待つ
艶やかにして寂しさも花万朶
春日傘さし影とたはむれ
ナオ
先生の黒板の文字めかり時
ンゴロンゴロに象の群ゆく
サバンナをジープ走らす地溝帯
酒場の隅で動く賭け金
素袷の烏鷺の戦ひ激しくて
げじげじ嫌と逃げ惑ふ人
フォークダンス踊るのならば好きな子と
婚活パーティー冴ゆる月影
愛猫のたま絨毯に寝そべつて
便りないのが無事の印よ
ナウ
振り返るステンドグラスの教会堂
長崎カステラ厚切りが好き
天皇のお手植ゑといふ花ふぶく
干潟に遊ぶ浅蜊やどかり
連衆 鈴木千惠子 本屋良子 武井敦子