令和6年2月23日(金)

第十九回猫蓑会リモート

二十韻「六根の塵」

鈴木了斎 捌
六根の塵へ二月の光かな
 了斎
淡雪解くる石仏の列
 暁巳
くるくると春の日傘を児に見せて
敏枝
好きなナッツを散らしクッキー
純子
天窓の夏の霜から猫の影
  健
病人のゐる家はここです
  斎
せめて背と胸を拭つてやれるだけ
 巳
君のお酌できつとまた飲む
  健
角の立つアイラモルトはスモーキー
荒くれてゐる捕鯨船員
  枝
ナオ
役者へも隙間風吹く芝居小屋
  健
赤城の山か利根の河原か
  斎
古里のあの平橋の架かる村
  枝
すぐに野分が来ると大声
  巳
芸術祭裸婦とマッチョで盛り上がる
ティファニーリング受け取つて月
ナウ
夏果ての砂にまみれて抱きあへば
 斎
沖行く舟の帆が遠くなり
   巳
壁白き天守へ寄する花の波
   枝
笛の音を聞く午後のうららか
  純
連衆 島村暁巳 箭内敏枝 近藤純子 由井 健

二十韻「潮の香のする」

西田 荷夕 捌
春江を潮の香のするところまで
荷夕
浮かれた猫の残す足跡
千惠子
土筆野の似顔絵少しゆがみゐて
志保子
イイネ本音はいいねどうでも
あづさ
凍月に禰宜の拍手空気裂く
あき子
老いも若きもかんじきを脱ぎ
  夕
津軽には太宰の愛した女達
  千
人力車にてプロポーズする
  志
このごろは耳が遠くて医者通ひ
  さ
魔法使ひの秘伝薬湯
  あ
ナオ
透明なプラスティックの浮いてこい
ジャージの胸に名前大きく
  千
図書館のいつもの席で舟を漕ぐ
  あ
霧が晴れたらなんと異世界
  さ
ぼろ市にガレを見つける月今宵
  志
むかごの飯に到来の酒
  夕
ナウ
智恵あると物をくるるがよき友で
 千
かへるのうたを口ずさみつつ
  志
贅沢は庭で花見ができること
  さ
段々畑うららかな風
  あ
連衆 鈴木千惠子 北龍志保子 清水あづさ 岩崎あき子

二十韻「御朱印」

大島洋子 捌
御朱印に筆の踊るや春一番
   洋子
いぬふぐり咲く巡礼の路
   徹心
雛の宴手作り菓子をお土産に
   香織
カメラ映えする店の玄関
   敦子
被災地で見るほど寒き能登の月
  白山
塗師の息の白くはずみぬ
   洋
高額の売却済みの札ばかり
   心
パワーカップル新婚の家
   織
弁当は母さん譲り卵焼き
   敦
光る刀身孫六の銘
   山
ナオ
浪音の耳にやさしき夏の川
   洋
襷がけして網戸張替へ
   心
兄嫁に付け文をする法事あと
   織
松茸山は今年豊作
   山
月射せば透明になる観覧車
   敦
おくれ蚊の刺す稚のほつぺた
   洋
ナウ
ブルドッグトートバッグに入れられて
決めてとなつた棒銀の技
  敦
樽酒に小槌振るつて飛花の宴
  心
おぼろおぼろに天下泰平
  山
連衆 佐藤徹心 平林香織 武井敦子 由雄白山