令和5年10月9日(月)

第十七回猫蓑会リモート

二十韻「こつんと弾む」

岩崎あき子 捌
団栗のこつんと弾む石畳
あき子
名残の月へさそふ駒下駄
徹心
馬肥ゆるダイエットなど気にせずに
洋子
漫画取り合ふ兄と弟
敦子
制服は短い丈が好みです
暁巳
電光のごと盗まれたキス
ライバルに譲つてやつた玉の輿
ご先祖様は清水次郎長
五輪塔冬の燕が旋回し
カメラ構へる着ぶくれの記者
ナオ
トレッキング山の魅力にとりつかれ
荒れ地耕し植ゑる蕎麦種
移住して思ひがけない人と会ひ
浴衣はだける湯上がりの肌
夏の霜逃避行の影長く伸び
三陸の海旨き弁当
ナウ
酒蔵の売りは吟醸呑みくらべ
有線放送のどらかな声
花吹雪過去と未来の真ん中に
ビルの上にも蜜蜂の舞ふ
連衆 佐藤徹心 大島洋子 武井敦子 島村暁巳

二十韻「丹波栗」

鈴木了斎 捌
丹波栗都の孫へ送りけり
白山
虫の音高き土間の片隅
良子
街々へ十三夜月照り映えて
了斎
行列の先確かめにゆく
円水
久々に見るハワイアンキルト展
志保子
煉瓦倉庫に人のあふるる
軌道跡日焼の子らの走り抜け
氷いちごがスカートに落つ
みみたぼを茜の色に染める君
路傍に咲いたやうな初恋
ナオ
寒鰤の半身を返す嫁ぎ先※
熱燗三合晩酌にする
屋台には叩き手を待つ大太鼓
鹿の子絞りの粋な鉢巻
月見舟遠来の客待ち兼ねて
翁に見せむ宮城野の萩
ナウ
秋蝶に亡き母来たと思うたが
布の鞄に遊ぶ人形
鄙びたる校舎を囲む花大樹
ともがらの呼ぶ午後のうららか
連衆 由雄白山 本屋良子 植田円水 北龍志保子

※ナオ折立:北陸には、新婦の実家が結婚後の歳暮に嫁ぎ先へ寒鰤一尾を贈り、嫁ぎ先が返礼にその半身を新婦側へ贈り返す風習がある。