リモート連句の場
第六回猫蓑会リモート
歌仙「冬ごもり」
功刀太郎 捌
- 手に馴染む万年筆や冬ごもり
- 太郎
- 節料物の準備をさをさ
- 良子
- カッターのオール揃ひて滑らかに
- 敦子
- 林の中へつづく砂道
- 純子
- 畳なはる山々の間望の月
- 良
- 小鳥迎へる藁屋根の家
- 太
ウ
- ラッシュ時のトートにボジョレ覗きける
- 純
- 音大美大おほらかな女子
- 敦
- 法廷でこども返せと争ひて
- 太
- 敵と囲めるタリバンの鍋
- 良
- 救はんとして殺さるる医師のあり
- 敦
- 白き灯台月の侘しく
- 純
- 悪口に聞き耳たてる夏芝居
- 良
- あらぬ方見る猫の不思議さ
- 太
- 石段に影の折れたる阿弥陀堂
- 純
- 綿菓子欲しと夫の駄々こね
- 敦
- 空港に常務を送る花盛り
- 太
- 昭和なつかし陽春の午後
- 良
ナオ
- シャボン玉ふはりふはりと門を出で
- 敦
- 魔女の纏ひし異次元の色
- 純
- 校庭を箒で掃けば小判あり
- 良
- 埋蔵金のロケの片づけ
- 太
- 初稽古欠かさぬ母のこだはりに
- 純
- 蚤の市にて虎の置物
- 敦
- 歴史ふる五条の橋の擬宝珠撫で
- 太
- 婆の気合でコロナ退散
- 良
- 地獄見た関取みごと蘇り
- 敦
- 疲れた身には湯加減のよく
- 純
- 秋月にノートも尽きる草枕
- 太
- かくれざとうが忍び寄りくる
- 良
ナウ
- 夜業疾く切り上げる部下自慢にて
- 純
- じやんけんぽんでいつもぐうだし
- 敦
- いとけなき夢は遥かに見る宇宙
- 良
- 故郷の川遠く流れて
- 太
- 花の窓合唱の声やはらかく
- 敦
- ドローンの音風光るとき
- 純
連衆 本屋良子 武井敦子 近藤純子
歌仙「目瞑りて聴く」
岩崎あき子 捌
- 数へ日や目瞑りて聴くシンフォニー
- あき子
- 窓辺に見ゆる冬凪の海
- 美智子
- 廻り来る鳥の飛翔のおほらかに
- 鄭和
- 航空便がまた南から
- 了斎
- 外国の月の絵本を子と読まむ
- 千惠子
- ふつふつと炊く栗の甘露煮
- 千
ウ
- 去来忌に覚めて小さき墓思ふ
- 斎
- 懐肥やす僧はにんまり
- 和
- 初恋の話をしたき赤提灯
- 智
- 君だけだよと口説く何度め
- 千
- おくれ毛をネイルの光る指で触れ
- あ
- 草の枕に残る潮の香
- 斎
- 蚕豆の莢ことごとく天を向き
- 千
- 夕立止んだら月を探さう
- 斎
- キャラゲーにボケとツッコミ教へ込み
- あ
- 健さん真似て無口アピール
- 千
- 侠客が睨み利かせる花の江戸
- 和
- 春の帽子を椅子に忘るる
- 千
ナオ
- うららかに予備校生は自転車で
- 智
- 列に並んで食べるタピオカ
- 斎
- 電柱の鴉が高くシャウトする
- 千
- おいらたちにもくれ給付金
- 斎
- 氷江を渡るがごとき心地して
- 和
- あかがりの手がとても愛しい
- 千
- あなたなら首を絞めてもいいんです
- 斎
- ナイフ握つて咲かす血の薔薇
- 和
- 噴水に妖精さんが輪を描き
- 千
- 古代遺跡の続く石壁
- 和
- 明月へテノール朗と響きゐて
- 智
- うそ寒の夜けふも筋トレ
- 千
ナウ
- ただ独り白く濁つた酒を酌む
- 斎
- 塗師の繕ふ金継の椀
- 智
- 鉄道が走らぬ村の鎮守様
- 千
- 観光大使猫が務める
- 仝
- 至福なる一期一会の花吹雪
- あ
- 弥生の丘に夢を育む
- 智
連衆 聖成美智子 髙山鄭和 鈴木了斎 鈴木千惠子
二十韻「ぽつりと一つ」
由井健 捌
- 呟きのぽつりと一つ帰り花
- 健
- 羽を休める凍鶴の群
- 酔山
- 蛇皮線の賑やかな音流れ来て
- 志保子
- 骨ばつた手で番茶汲みをる
- 敏枝
ウ
- 月を恋ふフランス窓の文学館
- 一枝
- 千草褥に逢瀬嬉しく
- 健
- 猪口に寄せ貴方と啜る新走
- 山
- 島と繋がる引き潮の道
- 志
- 蘊蓄を丁々発止立話
- 敏
- 観光バスの席割りをする
- 一
ナオ
- 山鉾は京都の街を睥睨し
- 健
- 行水の子ら笑ふ昼月
- 山
- シャガールの思ひ漂ふ青い夢
- 志
- 単身赴任紅ひいて待つ
- 敏
- 付け文は悪筆ながら愛溢れ
- 一
- 断捨離するも臨機応変
- 健
ナウ
- ガキ大将四番打者にてエースなり
- 山
- 釣つた公魚天麩羅で喰ふ
- 志
- つづら折り峠の先は花の村
- 敏
- 手編みの籠の置かれのどらか
- 一
連衆 吉田酔山 北龍志保子 箭内敏枝 西田一枝