令和3年12月11日(土)

第六回猫蓑会リモート

歌仙「冬ごもり」

功刀太郎 捌
手に馴染む万年筆や冬ごもり
太郎
節料物の準備をさをさ
良子
カッターのオール揃ひて滑らかに
敦子
林の中へつづく砂道
純子
畳なはる山々の間望の月
小鳥迎へる藁屋根の家
ラッシュ時のトートにボジョレ覗きける
音大美大おほらかな女子
法廷でこども返せと争ひて
敵と囲めるタリバンの鍋
救はんとして殺さるる医師のあり
白き灯台月の侘しく
悪口に聞き耳たてる夏芝居
あらぬ方見る猫の不思議さ
石段に影の折れたる阿弥陀堂
綿菓子欲しと夫の駄々こね
空港に常務を送る花盛り
昭和なつかし陽春の午後
ナオ
シャボン玉ふはりふはりと門を出で
魔女の纏ひし異次元の色
校庭を箒で掃けば小判あり
埋蔵金のロケの片づけ
初稽古欠かさぬ母のこだはりに
蚤の市にて虎の置物
歴史ふる五条の橋の擬宝珠撫で
婆の気合でコロナ退散
地獄見た関取みごと蘇り
疲れた身には湯加減のよく
秋月にノートも尽きる草枕
かくれざとうが忍び寄りくる
ナウ
夜業疾く切り上げる部下自慢にて
じやんけんぽんでいつもぐうだし
いとけなき夢は遥かに見る宇宙
故郷の川遠く流れて
花の窓合唱の声やはらかく
ドローンの音風光るとき
連衆 本屋良子 武井敦子 近藤純子

歌仙「目瞑りて聴く」

岩崎あき子 捌
数へ日や目瞑りて聴くシンフォニー
あき子
窓辺に見ゆる冬凪の海
美智子
廻り来る鳥の飛翔のおほらかに
鄭和
航空便がまた南から
了斎
外国の月の絵本を子と読まむ
千惠子
ふつふつと炊く栗の甘露煮
去来忌に覚めて小さき墓思ふ
懐肥やす僧はにんまり
初恋の話をしたき赤提灯
君だけだよと口説く何度め
おくれ毛をネイルの光る指で触れ
草の枕に残る潮の香
蚕豆の莢ことごとく天を向き
夕立止んだら月を探さう
キャラゲーにボケとツッコミ教へ込み
健さん真似て無口アピール
侠客が睨み利かせる花の江戸
春の帽子を椅子に忘るる
ナオ
うららかに予備校生は自転車で
列に並んで食べるタピオカ
電柱の鴉が高くシャウトする
おいらたちにもくれ給付金
氷江を渡るがごとき心地して
あかがりの手がとても愛しい
あなたなら首を絞めてもいいんです
ナイフ握つて咲かす血の薔薇
噴水に妖精さんが輪を描き
古代遺跡の続く石壁
明月へテノール朗と響きゐて
うそ寒の夜けふも筋トレ
ナウ
ただ独り白く濁つた酒を酌む
塗師の繕ふ金継の椀
鉄道が走らぬ村の鎮守様
観光大使猫が務める
至福なる一期一会の花吹雪
弥生の丘に夢を育む
連衆 聖成美智子 髙山鄭和 鈴木了斎 鈴木千惠子

二十韻「ぽつりと一つ」

由井健 捌
呟きのぽつりと一つ帰り花
羽を休める凍鶴の群
酔山
蛇皮線の賑やかな音流れ来て
志保子
骨ばつた手で番茶汲みをる
敏枝
月を恋ふフランス窓の文学館
一枝
千草褥に逢瀬嬉しく
猪口に寄せ貴方と啜る新走
島と繋がる引き潮の道
蘊蓄を丁々発止立話
観光バスの席割りをする
ナオ
山鉾は京都の街を睥睨し
行水の子ら笑ふ昼月
シャガールの思ひ漂ふ青い夢
単身赴任紅ひいて待つ
付け文は悪筆ながら愛溢れ
断捨離するも臨機応変
ナウ
ガキ大将四番打者にてエースなり
釣つた公魚天麩羅で喰ふ
つづら折り峠の先は花の村
手編みの籠の置かれのどらか
連衆 吉田酔山 北龍志保子 箭内敏枝 西田一枝