咲くほどにさみしさつのる馬酔木かな

白山

春泥つけて帰る家猫

千惠子

永き日の野球小僧は嬉しくて

　敏枝

好物ばかりけふの弁当

　荷夕

屋上の稲荷に月のオフィス街

　　　　千

竜胆似合ふ六尺の嫁

　　　　山

どぶろくをすすめる奴の下心

　　　　夕

郵便船は隔週に来る

　　　　枝

生成系ＡＩが我が職奪ふ

　　　　山

鸚鵡のまねる飼ひ主の癖

　　　　千

爺様の草笛の音は若やいで

　　　　枝

古刹の鴟尾に夏の霜おく

　　　　夕

松代の大本営は夢と消え

　　　　千

長い廊下を磨く皹

　　　　山

角巻を追へばやつぱり義姉さんだ

　　　夕

キャピキャピ娘ぼくを好きだと

　　　枝

寸前でカード詐欺から救はれて

　　　　山

感謝状には墨の黒々

　　　　千

奔放に枝を広げて花盛る

　　　　枝

畑鋤くひとに挨拶の児等

　　　　夕

あをき血の流るる春の蚕かな

　了斎

桑の葉束をむしる少年

　鄭和

ふらここの順番待ちも楽しげに

由紀子

アニメのキャラになりきつてみる

あき子

月耿と統ぶる海原波静か

　　　　和

点る迎火ぽつりぽつりと

　　　　斎

定番の薬味を添へて新豆腐

　　　　あ

ウインクよこすスナックのママ

　　　由

妻からのメール突然震へだし

　　　　斎

国道渡る信号が赤

　　　　和

地吹雪に記憶のかけら舞つてゐる

　　　由

暖炉の上に馴鹿の角

　　　　あ

琥珀とて水に浮くやつ沈むやつ

　　　　和

嘘もつくけどたまに本音も

　　　　斎

芭蕉布に柔肌透ける旅の月

　　　　あ

強く抱けば汗のかぐはし

　　　　由

いとけなきころの心を今もなほ

　　　 斎

校舎に垂れる優勝の幕

　　　　 和

からからと氏神の絵馬花を浴び

　　　 由

逃水追うて走る銀輪

　　　　 あ

水甕の五風十雨や鴨残る

　　健

どこもかしこも草の若やぐ

　香織

のどらかなボサノバ聴いて揺り椅子に

志保子

コーヒーカップに描く渦巻

　揺子

寒月に稜線新た津軽富士

　　　　 　 織

女猟師は獲物追ひかけ

　　　　　健

とびきりの婚約指輪差し出され

　　　　　揺

高速道路ポルシェ快走

　　　　　志

冥界へ憤怒で招く閻魔王

　　　　　 健

社長の小言聞いたふりする

　　　　　織

お出かけは芭蕉布纏ひ下駄の音

　　　　　志

アマゾン川にカヌー行きかふ

　　　　　揺

つけまつ毛三枚重ねランウェイに

　　　　織

温め酒にて裸身ゆらりと

　　　　　健

奥座敷亭主ゐぬ間の月今宵

　　　　　揺

縁の下ではちちろ虫鳴く

　　　　　志

観覧車一筆書きで描いてみる

　　　　　　 健

夢幻能見て寝落ちする客　

　　　　　　 織

吹き流す天の羽衣花の雲

　　　　　　 志

朱塗りの椀に入れる蛤

　　　　　　 揺