令和4年6月4日(土)

第九回猫蓑会リモート

二十韻「きらきらと」

箭内敏枝 捌
きらきらと雨待つ麦の穂波かな
敏枝
雲峰の間を抜ける飛行機
桃胡
兄弟のピアノ連弾きりもなし
美代子
追ひかけつこはいつも引き分け
裕介
泣顔の涙を隠す暗がりに
了斎
並ぶ枕へほのと月代
もつと早く来てと抓(つね)られ秋の宿
この身の冷えてやや震へだし
かき回す犬猫のゐて和みます
優勝カップ光るリビング
ナオ
新大陸の航路描かれてゐる海図
子等へ伝へん毛糸編む柄
月明の酒は熱燗屋台にて
美空ひばりの恋歌が好き
ごめが飛ぶあなたも飛んでこないかな
いやはや肥えたうちの母ちやん
ナウ
かるかんをお土産にする薩摩武士
温んだ水でいつも歯磨き
雪隠の小窓の外を花ふぶく
なかば霞むか遠浅の海
連衆 裏谷桃胡 山田美代子 和田裕介 鈴木了斎

二十韻「豌豆や」

鈴木千惠子 捌
豌豆や地球の自転まねる蔓
千恵子
どこへ行くのと問ふは夏蝶
桜千子
がま口の数ふる小銭きりもなし
ジャスミンティーを揺り椅子に飲む
未悠
探偵は隅の老人窓の月
荷夕
浮気調査は夕霧の中
禁断の実と知りながら林檎食べ
貨物列車に豚は満載
目的を教へられずに兵士征く
うちの秀才ゲームチェンジャー
ナオ
芭蕉忌にゆるりゆるりと墨を磨る
寒九の水に月の映りて
ゴンドラの唄を聴きつつ渡し舟
ワクチン接種証明を持ち
免疫のない男書く初心な文
京の舞妓の里は茨城
ナウ
乾杯は金の雫といふワイン
鈴を転がすやうな囀
長調の歌曲独唱花ふぶく
春のスカーフふはり肩先
連衆 鵜飼桜千子 由井健 棚町未悠 西田荷夕

二十韻「朝掘りの」

高山鄭和 捌
朝掘りの筍飯や湯気のぼる
鄭和
厨に響く郭公の声
雅子
全自動運転車など走るらん
敦子
同級生に出した絵手紙
志保子
月明しジャングルジムに残る子ら
美智子
行くか行かぬか穴惑する性
秋の宿こんな私は他人の妻
ブェノスアイレス街角のカフェ
採譜する教師古楽器マニアらし
泪拭はで語る越し方
ナオ
夜咄の茶事に万端心して
メガくつさめに砕け散る月
大漁旗立てて港へ帰る船
女たむろし猫もたむろす
ブレーキの効かぬあいつに惚れたバカ
鎌倉殿は時に助平
ナウ
高みより青きまほらを眺むれば
霞立ちたる北の島々
花衣祖母の手触り残りけり
シロツメクサで作る冠
連衆 武井雅子 武井敦子 北龍志保子 聖成美智子