リモート連句の場
第十四回猫蓑会リモート
半歌仙「半里にいくつ」
鈴木了斎 捌
- 海までの半里にいくつ花の寺
- 了斎
- 大仏越しにかかる初虹
- 濤声
- 焼諸子あてに乾杯ホテルにて
- 敏枝
- 泡のガラスを次々に吹く
- 桃胡
- 市中に三代続く錺職
- 声
- 雪解の富士の浮かぶ月明
- 枝
ウ
- 麻服を整へて行く先もなし
- 胡
- おやつくれろとせがむプードル
- 声
- 組合と無縁に過ごす若者ら
- 仝
- 冬の時代と嘆く老人
- 斎
- ひねもすをやはらかな手に介護され
- 声
- わが妻いまも生娘に似て
- 枝
- 満月の吉永小百合大胆に
- 胡
- 妙なところへぶらり蓑虫
- 枝
- 廃屋に木の実時雨の降り止まず
- 胡
- 浪人の兄昼もまだ寝る
- 枝
- 推し一筋ただただエモい生き方を
- 声
- 今日も今日とてライブ三昧
- 執筆
連衆 小原濤声 箭内敏枝 裏谷桃胡
半歌仙「気づかぬままに」
上原揺子 捌
- いつからと気づかぬままに日永かな
- 揺子
- 腕のピンクはもしや春の蚊
- 健
- 花の道遠近人のにぎやかに
- 香織
- はうじ茶の香のほのと流れ来
- 鄭和
- 水墨画掛けたる軸に月の影
- 健
- 山を越えゆく雁の声聞く
- 揺
ウ
- 旅の宿名を問はれなば吾亦紅
- 和
- 何を言つてもしてもかはいい
- 織
- 区役所に同性婚を届け出て
- 揺
- 長年の夢巴里のオペラ座
- 健
- 二時をさす幽霊船の古時計
- 織
- しやくれ弓張涼にさまよふ
- 和
- 祝勝のビールのシャワー皆笑顔
- 健
- 修道僧の上手い商ひ
- 揺
- 青空にふんはり浮かぶ雲ひとつ
- 和
- アンパンマンはみんな大好き
- 織
- 合唱の園児を囲むチューリップ
- 健
- 仕出し弁当持つて野遊
- 執筆
連衆 由井健 平林香織 髙山鄭和
二十韻「朱鷺色の街」
鈴木千惠子 捌
- 朱鷺色の街を訪ふ春の夢
- 千惠子
- 匂ふがごとく桜桃の花
- 照子
- レガッタを漕ぐ若人ら声かけて
- 裕介
- 母はおかつぱ姉もおかつぱ
- 雲呑
ウ
- 路地裏に祭太鼓の響く月
- 照
- 金魚と指輪買つてあげるよ
- 千
- レオタードぼんきゆつぼんのくつきりと
- 呑
- 枯山水の渦紋掃きたる
- 介
- 酒のあて一文字ぐるぐるつまみつつ
- 千
- 反魂丹で店は繁昌
- 照
ナオ
- 先物の相場泣く奴笑ふ奴
- 介
- 艶の増したる古き能面
- 呑
- 初めての巴里公演は成功し
- 照
- なかなか逢へぬ君は織姫
- 千
- 密事月はとつくに知つてゐる
- 呑
- 手持無沙汰でピーナッツ剥き
- 介
ナウ
- スヌーピーいつも窓辺で微笑んで
- 千
- ちんちん電車濠端を行く
- 照
- 明日よりは花守人となる覚悟
- 介
- 指さす方を見れば初虹
- 呑
連衆 五郎丸照子 和田裕介 古和田雲呑