令和5年4月8日(土)

第十四回猫蓑会リモート

半歌仙「半里にいくつ」

鈴木了斎 捌
海までの半里にいくつ花の寺
了斎
大仏越しにかかる初虹
濤声
焼諸子あてに乾杯ホテルにて
敏枝
泡のガラスを次々に吹く
桃胡
市中に三代続く錺職
雪解の富士の浮かぶ月明
麻服を整へて行く先もなし
おやつくれろとせがむプードル
組合と無縁に過ごす若者ら
冬の時代と嘆く老人
ひねもすをやはらかな手に介護され
わが妻いまも生娘に似て
満月の吉永小百合大胆に
妙なところへぶらり蓑虫
廃屋に木の実時雨の降り止まず
浪人の兄昼もまだ寝る
推し一筋ただただエモい生き方を
今日も今日とてライブ三昧
執筆
連衆 小原濤声 箭内敏枝 裏谷桃胡

半歌仙「気づかぬままに」

上原揺子 捌
いつからと気づかぬままに日永かな
揺子
腕のピンクはもしや春の蚊
花の道遠近人のにぎやかに
香織
はうじ茶の香のほのと流れ来
鄭和
水墨画掛けたる軸に月の影
山を越えゆく雁の声聞く
旅の宿名を問はれなば吾亦紅
何を言つてもしてもかはいい
区役所に同性婚を届け出て
長年の夢巴里のオペラ座
二時をさす幽霊船の古時計
しやくれ弓張涼にさまよふ
祝勝のビールのシャワー皆笑顔
修道僧の上手い商ひ
青空にふんはり浮かぶ雲ひとつ
アンパンマンはみんな大好き
合唱の園児を囲むチューリップ
仕出し弁当持つて野遊
執筆
連衆 由井健 平林香織 髙山鄭和

二十韻「朱鷺色の街」

鈴木千惠子 捌
朱鷺色の街を訪ふ春の夢
千惠子
匂ふがごとく桜桃の花
照子
レガッタを漕ぐ若人ら声かけて
裕介
母はおかつぱ姉もおかつぱ
雲呑
路地裏に祭太鼓の響く月
金魚と指輪買つてあげるよ
レオタードぼんきゆつぼんのくつきりと
枯山水の渦紋掃きたる
酒のあて一文字ぐるぐるつまみつつ
反魂丹で店は繁昌
ナオ
先物の相場泣く奴笑ふ奴
艶の増したる古き能面
初めての巴里公演は成功し
なかなか逢へぬ君は織姫
密事月はとつくに知つてゐる
手持無沙汰でピーナッツ剥き
ナウ
スヌーピーいつも窓辺で微笑んで
ちんちん電車濠端を行く
明日よりは花守人となる覚悟
指さす方を見れば初虹
連衆 五郎丸照子 和田裕介 古和田雲呑