リモート連句の場
第十八回猫蓑会リモート
二十韻「筆塚の」
由井健 捌
- 筆塚の穂先に宿る冬日かな
- 健
- 紅を滲ませ年の梅咲く
- 千惠子
- 薄茶席師匠の点前の嫋やかに
- ゆう子
- 可愛い顔のお澄ましの子等
- 敏枝
ウ
- 行水を終へて盥に浮かぶ月
- 千
- 揃ひの浴衣着ての銀ブラ
- 健
- そつと肩抱きシャンソンに聴き入りて
- 枝
- そ知らぬ振りで過ぎる黒猫
- ゆ
- 峰々を回峰行の草鞋ばき
- 健
- オーバードーズ夢の境地へ
- 千
ナオ
- 掛け軸の妖怪変化踊りだし
- ゆ
- 打つた白球軽く場外
- 枝
- 渾身のプロポーズ決めVサイン
- 千
- ヴィンテージ汲み夜長睦みて
- 健
- 満月の金波銀波に舟を出す
- 枝
- 何を置いてもまづ秋祭
- ゆ
ナウ
- 寅さんが長口上の啖呵売
- 健
- インバウンドの並ぶ団子屋
- 千
- ビル街のからくり時計花ふぶく
- ゆ
- 里の便りに鰊来たとか
- 枝
連衆 鈴木千惠子 夷藤ゆう子 箭内敏枝
二十韻「厚着して」
佐藤徹心 捌
- 厚着して三人掛けの中の席
- 徹心
- 歳末セール音響の渦
- あき子
- ピアニスト指を大事に守りゐて
- 多紀子
- 駆けだしていく登校の子等
- 志保子
ウ
- 留学へ見送る月の滑走路
- あ
- 涙を誘ふ秋の夕焼
- 心
- ブランデー栗のグラッセゆつくりと
- 志
- 暴れ馬追ふ馬子赤ら顔
- 紀
- ころころと乙女心はよく変はる
- 心
- ピンクの付箋ハートいつぱい
- あ
ナオ
- 交差点肩触合つて目眩する
- 紀
- 浴衣まとつて行く彼の部屋
- 志
- 窓越しにスカイツリーと夏の月
- 紀
- 鼠小僧の墓石欠き取る
- 心
- 倫敦の城へそくりで買ふ夢を
- 志
- アビーロードに甦る歌
- あ
ナウ
- 令和にも生き延びているサユリスト
- 心
- おたまじやくしを掬ふ沼の辺
- あ
- 風のまま膨れ崩れる花筏
- 志
- 甘味処の午後のうららか
- 紀
連衆 岩崎あき子 今井多紀子 北龍志保子
短歌行「枇杷の花」
西田荷夕 捌
- 枇杷の花ひと日ひと日を慈しみ
- 荷夕
- 空をめざして尖る雪吊
- 了斎
- 城下町区割りの線の美しく
- 葵
- 迷子の猫を探す貼り紙
- あづさ
ウ
- 月の夜に深まる謎を追ふ刑事
- 斎
- ゲノム情報漏れてすさまじ
- 夕
- どこまでが元の顔やら菊枕
- さ
- ふたりしつぽり飴色の時
- 葵
- 帽子だけ転がる無言劇の後
- 夕
- そよろそよろと風のたはむれ
- 斎
- 屋形舟やれこの盃に花片を
- 葵
- 蓬の餅を二つ頬ばる
- 斎
ナオ
- 南画にはのどかな仏在します
- さ
- 閉架にひそと下賜の巻物
- 夕
- ガラクタをお宝ですとMCに
- さ
- 蝶ネクタイが右に傾き
- 葵
- 膠着の家族会議へ夏の月
- 夕
- おいらの恋はいつも汗だく
- 斎
- 十人のをとこ飲み込み九人捨て
- 葵
- 食後の薬またも忘れる
- さ
ナウ
- 知らぬ間にジキルとハイド入れ替はり
- 斎
- 幼友達いまは大臣
- 夕
- 汽罐車が万朶の花の橋を行く
- さ
- 春蚕かさりと微睡の中
- 葵
連衆 鈴木了斎 石川葵 清水あづさ
半歌仙「叡山の」の巻
本屋良子 捌
- 叡山の奥の出といふ冬の虹
- 良子
- 大歳近き湖の漣
- 鄭和
- ゴルファーのクラブ選びのきりもなし
- 香織
- 父と一緒にテレビ観戦
- 揺子
- 射し込める月影届く黒書院
- 和
- 乱るる萩を壺に活け込み
- 良
ウ
- 楊貴妃をめざし糸瓜の水を採る
- 揺
- イケメン医師に通ふ診察
- 織
- 戦争よりキスは強いと嘯いて
- 良
- 僧は黙して何も語らず
- 和
- 鳥獣戯画甲乙丙巻公開中
- 織
- 夏の霜分け仮面ライダー
- 仝
- 蛍を追うて本州縦断す
- 和
- 太麺が好き北の拉麺
- 良
- 長兄は人の意見を聞かぬたち
- 揺
- 胡弓に乗せて踊る島唄
- 織
- 車座に酒酌み交はす花のもと
- 揺
- 暮れ遅き日は猫と縁側
- 和
連衆 髙山鄭和 平林香織 上原揺子