リモート連句の場
第十二回猫蓑会リモート
二十韻「切株は」
箭内敏枝 捌
- 切株は夫の腰掛小六月
- 敏枝
- 前をゆつくり過る冬蝶
- 美智子
- カンバスにさつと自画像描き上げて
- 健
- 陶器の鉢が窓辺彩る
- 純子
ウ
- 鍵開ける間にもうつろふ今日の月
- 純
- 女心を攫ふ爽籟
- 健
- 藁塚の藁にまみれて密事
- 枝
- ピアスはずした跡を甘噛み
- 純
- イタリアへオペラの夢はすてきれず
- 美
- 何処で鳴るやら響く鐘の音
- 健
ナオ
- 子らは皆都会暮らしよ古簾
- 美
- 月光の下西瓜割りする
- 健
- マンホール蓋をくぐれば秘密基地
- 美
- 枕絵もたせ姫の輿入れ
- 純
- さまざまな恋を捨て今尼御前
- 枝
- ペットボトルが転がつてくる
- 仝
ナウ
- 白寿てふ楽しき宴の祝酒
- 美
- 木の芽田楽家ごとの味
- 純
- 花の昼乾御門を通り抜け
- 美
- 波打際に磯菜摘む影
- 健
連衆 聖成美智子 由井健 近藤純子
二十韻「霜の菊」
髙山鄭和 捌
- 猫蓑や凜として咲け霜の菊
- 鄭和
- 鶴来る野の息吹切実
- 転石
- 稀覯の書古本市で探すらん
- 揺子
- 手織の紬風合の良く
- 志保子
ウ
- 月光に香聞くひとの嫋やかに
- 石
- 青菜の虫が好きな姫君
- 和
- 響きたる地芝居の笛確かにて
- 志
- ぐづる児に読むトイストーリー
- 揺
- 宇宙へと連れ行く友を募ります
- 和
- 満洲国の夢の様様
- 石
ナオ
- 大発会当たり外れも運のうち
- 揺
- 出初式には酒と木遣で
- 志
- 市長来て今度もどうぞよろしくと
- 石
- 中身不明の厚き封筒
- 和
- 夏の月ティンカーベルの宙返り
- 志
- 気を若くして喜寿の筋トレ
- 揺
ナウ
- 神主と坊主に頼む後始末
- 和
- 流した雛を片付ける人
- 石
- 花のもと子等生きいきと遊びをり
- 揺
- 春の城址を渡るそよかぜ
- 志
連衆 林転石 上原揺子 北龍志保子
源心「枯荻の白」
岩崎あき子 捌
- 枯荻の風に耐へたる白さかな
- あき子
- いつも決まつて日記買ふ店
- 千惠子
- 耳近く流行りのロック聞こえきて
- 良子
- 石段駆ける野球部の子等
- 敦子
ウ
- 百年の鳥居にかかる宵の月
- 千
- 木葉山女を君に振舞ふ
- あ
- 密通をおかめこほろぎ覗きをり
- 敦
- オートクチュールのスーツ長押に
- 良
- 金継が景色となれる青磁壺
- あ
- 真贋のほど見抜く鑑定
- 千
- 体中どこに触れても悪知恵が
- 良
- 再放送を楽しみに待つ
- 千
- 艶やかにして寂しさも花万朶
- 敦
- 春日傘さし影とたはむれ
- あ
ナオ
- 先生の黒板の文字めかり時
- 敦
- ンゴロンゴロに象の群ゆく
- 良
- サバンナをジープ走らす地溝帯
- あ
- 酒場の隅で動く賭け金
- 千
- 素袷の烏鷺の戦ひ激しくて
- 良
- げじげじ嫌と逃げ惑ふ人
- 敦
- フォークダンス踊るのならば好きな子と
- 千
- 婚活パーティー冴ゆる月影
- あ
- 愛猫のたま絨毯に寝そべつて
- 敦
- 便りないのが無事の印よ
- 良
ナウ
- 振り返るステンドグラスの教会堂
- あ
- 長崎カステラ厚切りが好き
- 千
- 天皇のお手植ゑといふ花ふぶく
- 良
- 干潟に遊ぶ浅蜊やどかり
- 敦
連衆 鈴木千惠子 本屋良子 武井敦子