リモート連句の場
第十三回猫蓑会リモート
二十韻「春の雪」
鈴木千惠子 捌
- 坪庭を二分広くする春の雪
- 千惠子
- 点々々と恋猫の跡
- 鄭和
- うたた寝の頬に起きよと花舞ひて
- 徹心
- 香り楽しみ淹れるコーヒー
- 揺子
ウ
- 赤を帯び繊月かかる西の空
- 和
- 菊人形に誘ひ逢引
- 千
- 渡り鳥ニヒルに笑ふ別れ際
- 揺
- トラック野郎峠越え行く
- 心
- 厄除けのお守りいつも腰につけ
- 千
- 巾着切りを泣かす天蚕糸(てんぐす))
- 和
ナオ
- そよ風が左右に揺らすアドバルーン
- 心
- 氷あづきの匙を舐める子
- 揺
- あの人の形見と思ひ大切に
- 和
- 甘い囁き耳に残れる
- 千
- 月冴えて今宵繙く源氏譚
- 揺
- ふくら雀が遊ぶ掛軸
- 心
ナウ
- 異次元にいつしか老師いざなはれ
- 千
- 千円あればべろべろになり
- 和
- 艶やかに極楽鳥花夏開く
- 心
- 麦わら帽の似合ふ銅像
- 揺
連衆 髙山鄭和 佐藤徹心 上原揺子
二十韻「白湯やはらかに」
古和田雲呑 捌
- 寒明や白湯やはらかに満ちゐたる
- 雲呑
- 窓辺に香る梅花一輪
- 良子
- 入学に英英辞典贈られて
- 桜千子
- 大きな飴を頬張つてをり
- 了斎
ウ
- 昼月のあばたを撫づる鯉幟
- 健
- 守宮の守る古き曲屋
- 桜
- 嫁御寮しやんしやん馬の鈴ならし
- 斎
- 読み間違へた君のトリセツ
- 桜
- 寝巻など着たくはないの朝までは
- 斎
- 猫が欠伸をしてる片隅
- 良
ナオ
- 托鉢が雪の辻での貰ひ酒
- 健
- 切つた張つたの刃傷の沙汰
- 良
- どこからかジタンカポラル匂ふとき
- 桜
- 忘れ扇の持ち主は誰
- 良
- 月夜なら硝子の靴を履けさうな
- 呑
- 秋の渇きは汝ゆゑにこそ
- 斎
ナウ
- 頃を見て島めぐりするゼウス神
- 良
- 鳥の言葉がわかる村人
- 斎
- 花の咲く故郷が好き花が好き
- 桜
- 無心に高く上がる風船
- 健
連衆 本屋良子 鵜飼桜千子 鈴木了斎 由井健
半歌仙「忘れたる」
裏谷桃胡 捌
- 忘れたる鉢に顔出すもの芽かな
- 桃胡
- かたびら雪に栗鼠の足跡
- 房子
- 伝来の雛人形と遊ぶらん
- 純子
- 好みのマグに淹れるコーヒー
- 香織
ウ
- 大空にしらじら沈む明けの月
- 敏枝
- 赤い羽根つけ朝練の子ら
- 純
- 新米のでかいお握り五個作る
- 房
- あつき掌ふつくらとして
- 胡
- 空蝉と軒端荻が入れ替はり
- 織
- できちやつた婚母お墨付
- 枝
ナオ
- 口ほどで無し婿殿の預金高
- 仝
- ロックンロールプレミアム席
- 房
- 夏の月自家用ジェット追ひかける
- 織
- 川辺屋台で冷やを一献
- 純
- 住職は四季折々の富士を描き
- 枝
- 鴉がさつと舞ひ降りる道
- 織
ナウ
- 花だより待ち遠しくて日をめくり
- 房
- ユーチューブみる長閑らかな午後
- 織
連衆 室房子 近藤純子 平林香織 箭内敏枝