令和5年2月23日(木)

第十三回猫蓑会リモート

二十韻「春の雪」

鈴木千惠子 捌
坪庭を二分広くする春の雪
千惠子
点々々と恋猫の跡
鄭和
うたた寝の頬に起きよと花舞ひて
徹心
香り楽しみ淹れるコーヒー
揺子
赤を帯び繊月かかる西の空
菊人形に誘ひ逢引
渡り鳥ニヒルに笑ふ別れ際
トラック野郎峠越え行く
厄除けのお守りいつも腰につけ
巾着切りを泣かす天蚕糸(てんぐす))
ナオ
そよ風が左右に揺らすアドバルーン
氷あづきの匙を舐める子
あの人の形見と思ひ大切に
甘い囁き耳に残れる
月冴えて今宵繙く源氏譚
ふくら雀が遊ぶ掛軸
ナウ
異次元にいつしか老師いざなはれ
千円あればべろべろになり
艶やかに極楽鳥花夏開く
麦わら帽の似合ふ銅像
連衆 髙山鄭和 佐藤徹心 上原揺子

二十韻「白湯やはらかに」

古和田雲呑 捌
寒明や白湯やはらかに満ちゐたる
雲呑
窓辺に香る梅花一輪
良子
入学に英英辞典贈られて
桜千子
大きな飴を頬張つてをり
了斎
昼月のあばたを撫づる鯉幟
守宮の守る古き曲屋
嫁御寮しやんしやん馬の鈴ならし
読み間違へた君のトリセツ
寝巻など着たくはないの朝までは
猫が欠伸をしてる片隅
ナオ
托鉢が雪の辻での貰ひ酒
切つた張つたの刃傷の沙汰
どこからかジタンカポラル匂ふとき
忘れ扇の持ち主は誰
月夜なら硝子の靴を履けさうな
秋の渇きは汝ゆゑにこそ
ナウ
頃を見て島めぐりするゼウス神
鳥の言葉がわかる村人
花の咲く故郷が好き花が好き
無心に高く上がる風船
連衆 本屋良子 鵜飼桜千子 鈴木了斎 由井健

半歌仙「忘れたる」

裏谷桃胡 捌
忘れたる鉢に顔出すもの芽かな
桃胡
かたびら雪に栗鼠の足跡
房子
伝来の雛人形と遊ぶらん
純子
好みのマグに淹れるコーヒー
香織
大空にしらじら沈む明けの月
敏枝
赤い羽根つけ朝練の子ら
新米のでかいお握り五個作る
あつき掌ふつくらとして
空蝉と軒端荻が入れ替はり
できちやつた婚母お墨付
ナオ
口ほどで無し婿殿の預金高
ロックンロールプレミアム席
夏の月自家用ジェット追ひかける
川辺屋台で冷やを一献
住職は四季折々の富士を描き
鴉がさつと舞ひ降りる道
ナウ
花だより待ち遠しくて日をめくり
ユーチューブみる長閑らかな午後
連衆 室房子 近藤純子 平林香織 箭内敏枝