令和4年10月10日(月)

第十一回猫蓑会リモート

二十韻「透視図法」

鈴木了斎 捌
秋澄むや透視図法と化せる街
了斎
栗名月の雨上る頃
志保子
餌さがす鹿の足跡追ひかけて
房子
ホップステップジャンプする子ら
良子
アンダンテからアレグロへピアノ曲
IT長者一炊の夢
吹き荒ぶ木枯を背に受け止めて
ロープ繋いで登る氷壁
熱燗を舐めつつ語りあふ昔
午前三時をとうに回つた
ナオ
丘越えてヒースクリフがやつて来る
不意に心を騒がせる人
下手な接吻(キス)今日の試験は零点よ
白薔薇の香の後に残れる
月きらと散りミネソタの夏の湖
神学校の生徒散策
ナウ
革装と天金の書を取り出して
もてなしの膳まづは独活から
川幅を膨らませつつ花筏
挨拶交はす声ののどらか
執筆
連衆 北龍志保子 室房子 本屋良子

二十韻「新走」

大島洋子 捌
新走日々のカオスがあてとなり
洋子
栗名月の伴は愛犬
徹心
八千草を手に手に抱へ帰るらん
あき子
小学唱歌声を揃へて
暁巳
横丁を自転車漕いで豆腐売り
看板娘化粧濃い目に
名古屋では持てないほどの引出物
サービス上々サガワクロネコ
打水は朝昼夕と三度撒く
縁台将棋たけなはとなり
ナオ
防災の補給点検忘れずに
富士の樹海は天然の堰堤(ダム)
清張の恋は必ず破綻する
悪い奴ほど美女が取り巻き
凍月の禰宜の柏手(かしわで)裂く空気
四つ切りの古紙包む焼芋
ナウ
闘志秘めブレイクダンスパリめざし
シティ生まれの若い蜜蜂
名苑の名木今ぞ花万朶
春光で撮る会心の作
執筆
連衆 佐藤徹心 岩崎あき子 島村暁巳

二十韻「秋のかたまり」

鈴木千惠子 捌
銀輪や秋のかたまり分けてゆく
千惠子
金木犀に淡き月影
新走今年の出来は上々に
敏枝
キッチンバサミ何にでもよき
工芸家百円ショップお気に入り
犬を介して芽生えたる愛
抱かれる聖母のやうな君の手に
回文めいた俊太郎の詩
海亀に乗りもぐりたい青い海
囓りつつゆく胡瓜一本
ナオ
国境のなき医師団は決意秘め
つけつぱなしのラジオうつろに
仮初の女遊びと割り切つて
偽名を記す粉雪の宿
満月に黒川能の面躍如
山の塒に鴉眠れる
ナウ
羽箒を作りつづけて古希迎へ
遠路来た友蕗味噌を召せ
樹木医が耳当てて聞く花の声
かげろふ揺れるまほろばの里
連衆 近藤薫 箭内敏枝