リモート連句の場
第十一回猫蓑会リモート
二十韻「透視図法」
鈴木了斎 捌
- 秋澄むや透視図法と化せる街
- 了斎
- 栗名月の雨上る頃
- 志保子
- 餌さがす鹿の足跡追ひかけて
- 房子
- ホップステップジャンプする子ら
- 良子
ウ
- アンダンテからアレグロへピアノ曲
- 良
- IT長者一炊の夢
- 志
- 吹き荒ぶ木枯を背に受け止めて
- 斎
- ロープ繋いで登る氷壁
- 良
- 熱燗を舐めつつ語りあふ昔
- 房
- 午前三時をとうに回つた
- 良
ナオ
- 丘越えてヒースクリフがやつて来る
- 斎
- 不意に心を騒がせる人
- 良
- 下手な接吻(キス)今日の試験は零点よ
- 房
- 白薔薇の香の後に残れる
- 志
- 月きらと散りミネソタの夏の湖
- 房
- 神学校の生徒散策
- 良
ナウ
- 革装と天金の書を取り出して
- 仝
- もてなしの膳まづは独活から
- 房
- 川幅を膨らませつつ花筏
- 良
- 挨拶交はす声ののどらか
- 執筆
連衆 北龍志保子 室房子 本屋良子
二十韻「新走」
大島洋子 捌
- 新走日々のカオスがあてとなり
- 洋子
- 栗名月の伴は愛犬
- 徹心
- 八千草を手に手に抱へ帰るらん
- あき子
- 小学唱歌声を揃へて
- 暁巳
ウ
- 横丁を自転車漕いで豆腐売り
- 心
- 看板娘化粧濃い目に
- あ
- 名古屋では持てないほどの引出物
- 洋
- サービス上々サガワクロネコ
- 巳
- 打水は朝昼夕と三度撒く
- 心
- 縁台将棋たけなはとなり
- 巳
ナオ
- 防災の補給点検忘れずに
- あ
- 富士の樹海は天然の堰堤(ダム)
- 心
- 清張の恋は必ず破綻する
- 巳
- 悪い奴ほど美女が取り巻き
- あ
- 凍月の禰宜の柏手(かしわで)裂く空気
- 仝
- 四つ切りの古紙包む焼芋
- 巳
ナウ
- 闘志秘めブレイクダンスパリめざし
- あ
- シティ生まれの若い蜜蜂
- 心
- 名苑の名木今ぞ花万朶
- 巳
- 春光で撮る会心の作
- 執筆
連衆 佐藤徹心 岩崎あき子 島村暁巳
二十韻「秋のかたまり」
鈴木千惠子 捌
- 銀輪や秋のかたまり分けてゆく
- 千惠子
- 金木犀に淡き月影
- 薫
- 新走今年の出来は上々に
- 敏枝
- キッチンバサミ何にでもよき
- 千
ウ
- 工芸家百円ショップお気に入り
- 薫
- 犬を介して芽生えたる愛
- 枝
- 抱かれる聖母のやうな君の手に
- 千
- 回文めいた俊太郎の詩
- 薫
- 海亀に乗りもぐりたい青い海
- 枝
- 囓りつつゆく胡瓜一本
- 千
ナオ
- 国境のなき医師団は決意秘め
- 薫
- つけつぱなしのラジオうつろに
- 枝
- 仮初の女遊びと割り切つて
- 千
- 偽名を記す粉雪の宿
- 薫
- 満月に黒川能の面躍如
- 枝
- 山の塒に鴉眠れる
- 千
ナウ
- 羽箒を作りつづけて古希迎へ
- 薫
- 遠路来た友蕗味噌を召せ
- 枝
- 樹木医が耳当てて聞く花の声
- 千
- かげろふ揺れるまほろばの里
- 枝
連衆 近藤薫 箭内敏枝