リモート連句の場
第八回猫蓑会リモート
二十韻「大楠の風」
岩崎あき子 捌
- 清明や大楠の風軽やかに
- あき子
- 弥生野よぎる自転車の列
- 酔山
- 宿題の巣箱づくりに励むらん
- 聰
- 武将の名にて漢字覚える
- 純子
ウ
- 毛皮着て月の銀座をナイスガイ
- 山
- 凍てる張込み億ションの外
- あ
- 思ひ切り嫉妬に狂ひ平手打ち
- 純
- 有無をいはせぬ熱き口づけ
- 聰
- 空缶を蹴飛ばし子らのまつしぐら
- あ
- 箒離さぬ若き権禰宜
- 山
ナオ
- ときをりに声はり上ぐる仏法僧
- 聰
- 炎暑の中の長期派遣を
- 純
- 痒いとこ掻いて欲しいと誘惑し
- 山
- 秋の簾に透ける刺青
- あ
- 月今宵三種の酒を飲みくらべ
- 純
- 匂ひただよふ母の栗飯
- 聰
ナウ
- 離島までドローン使ひ配達し
- あ
- 診療所では猫が院長
- 山
- 村史には平家伝説花万朶
- 聰
- 夢語り合ふうららかな午後
- 純
連衆 吉田酔山 杉本聡 近藤純子
二十韻「関東平野」
武井雅子 捌
- 清明や関東平野一望す
- 雅子
- かぎろひの中昇る炊煙
- 了斎
- 春挽の筬(をさ)打つ音の軽やかに
- 良子
- 角を曲がればなびくスカーフ
- 揺子
ウ
- 街並の影のぎざぎざ夏の月
- 斎
- 玉めいて忘られぬ肌
- 雅
- 笑まひつつ婚約指輪かざし見る
- 揺
- マリアの在す絵硝子の中
- 良
- 国境に足止めを食ふ避難民
- 雅
- 訛の変なやつもちらほら
- 斎
ナオ
- ここへきて終相場は荒れ模様
- 良
- 電光掲示GOと点滅
- 揺
- あとすこしあなたの乗つた便が来る
- 斎
- 新酒交はして火照る早暁
- 雅
- 残月をいついつまでも仰ぎつつ
- 揺
- 歌女鳴く声に耳を傾け
- 良
ナウ
- 父母は故郷に居て息災で
- 雅
- 仲よささうな道の神様
- 斎
- 漂へる光となりて花吹雪
- 良
- 子等の遊べる園のうららか
- 揺
連衆 鈴木了斎 本屋良子 上原揺子(ゆりいこ)
二十韻「桃の紅」
西田荷夕 捌
- 遠景に桃の紅確とあり
- 荷夕
- 影の揺らめく畦塗りの人
- 鄭和
- 巣籠りの鳥やあるらん聞こえきて
- 転石
- エルボーパッチ少し擦り切れ
- 未悠
ウ
- 冬の霧ワトソン君の肩に月
- 和
- 納めの弥撒に人妻の君
- 夕
- 傭兵は涙隠して国許へ
- 悠
- 砂漠の果てに追へる俤
- 石
- トラックに援助食糧積み込んで
- 夕
- ガラパゴスから減つた陸亀
- 和
ナオ
- 海底の鉱床を掘る探査行
- 石
- お化け屋敷で幽霊の役
- 悠
- 仕送りの絶えて久しき四畳半
- 和
- 秘密の逢瀬紅葉踏み分け
- 夕
- 月円か太極拳をふたりして
- 悠
- 翡翠の盃に酌んで漸寒
- 石
ナウ
- 永年の持病に輸入アンプル剤
- 夕
- 横文字読めぬことは内緒に
- 和
- 花の雲長き架け橋覆ひける
- 石
- 風船をつきやまぬ子供ら
- 悠
連衆 高山鄭和 林転石 棚町未悠
二十韻「幼年の空」
鈴木千惠子 捌
- ぶらんこや幼年の空高かりき
- 千惠子
- つはぶき群れてリズム取るかに
- 敏枝
- 親猫と仔猫との戯れ切りもなし
- 健
- 留学生に和菓子振る舞ふ
- 美智子
ウ
- 月凍つるフード目深に帰る道
- 志保子
- 念仏の声冬安居なり
- 枝
- 駆落ちを涙ながらに頼まれる
- 智
- 重い財布に揺れる尻軽
- 健
- 夢に見た豪華客船乗り込んで
- 志
- 正体不明流行るウイルス
- 千
ナオ
- ゲルニカの絵に乾杯のビール干す
- 健
- 氷いちごで口が真つ赤に
- 枝
- 厚化粧してゐる女性専用車
- 千
- 銀座のママが拾ふ銀杏
- 志
- 残月に二人の影のよりそひぬ
- 枝
- 在の案山子は伏し目がちにて
- 健
ナウ
- 椀盛の蒸し蓮根に餡を掛け
- 志
- 池辺に立てば鯉の寄り来る
- 千
- 花に吹けブラスバンドの長き列
- 健
- メーデーを行く帽子いろいろ
- 執筆
連衆 箭内敏枝 由井健聖 成美智子 北龍志保子