リモート連句の場
第五回猫蓑会リモート
二十韻「草よりほそき」
鈴木了斎 捌
- 長月や草よりほそき草の影
- 了斎
- 文机浄め十三夜待つ
- 敦子
- さはやかにへのへのもへじ描きゐて
- たけを
- 座りまた起ち走る子供等
- 太郎
ウ
- 空瓶のころり転がる納屋の奥
- 敦
- 蛇と鼠の永き因縁
- 斎
- 夏シャツの胸の高さに魅了され
- 郎
- 鏡合せのやうな相性
- を
- どうしても金庫の鍵を開けられぬ
- 斎
- 震へ止まらず咳も止まらず
- 敦
ナオ
- 厳かに聖燭祭の歌流れ
- を
- 何につけても酒を飲む奴
- 郎
- ささやかなたつきなれども旅に出て
- 敦
- 拾ひ集むるそのかみの恋
- 斎
- 豪邸の嫦娥姉妹に迎へられ
- 郎
- 鉄条網に鵙の早贄
- を
ナウ
- 銃声の時折響く末枯野
- 斎
- 天気予報を無視と決め込む
- 敦
- 今日の日は花の降るまま浴びるまま
- を
- 蛤汁に暮れてゆく海
- 郎
連衆 武井敦子 山中たけを 功刀太郎
二十韻「涸びたる身に」
由井健 捌
- 名月や涸びたる身に詩ごころ
- 健
- ブックポストの中に蟋蟀
- 今朝
- 理科クラブ茸採らんと山へ出て
- 有子
- 香りほのかに残る指先
- 純子
ウ
- よろづ屋の灯だけ明るい宿場町
- 三世子
- Uターンにて縁を戻すぞ
- 健
- 金継ぎをして初恋のマグカップ
- 朝
- 漫画を読めば思ひ出す夢
- 有
- 海霧切れてくつきり浮かぶ遠き島
- 純
- 天神祭太鼓轟く
- 世
ナオ
- 二の膳や三の膳やら杯重ね
- 健
- 頑固おやぢはコペルニクス似
- 朝
- 君子でもなけれど吾は仾変す
- 有
- 襖絵前にさらり脱ぎ捨て
- 純
- 月皓皓風花の夜の密事
- 世
- 勧進帳はスリル満点
- 勧進帳はスリル満点
ナウ
- 大跳躍決めて義足のオリンピアン
- 朝
- 皆が浮かれりや猫も浮かれる
- 有
- 惜しげなく散り敷く花を踏みしめむ
- 純
- 炉塞ぎの間の神妙な顔
- 世
連衆 村井今朝 佐々木有子 近藤純子 高月三世子
二十韻「秋の蝶」
鈴木千惠子 捌
- 連綿のかな文字をかく秋の蝶
- 千惠子
- グラデーションを見せる野の色
- 洋子
- 月出れば大工道具を片付けて
- 酔山
- 好みのあてで宵の一杯
- 蝸舎
ウ
- 碧眼の法被いなせに人力車
- あき子
- 清明の術歴女迷へる
- 洋
- すでにもう押さへきれないこのわたし
- あ
- 食べ放題のホテルスイーツ
- 洋
- 少年を集め鍛へる寒相撲
- 山
- 木菟の耳透明になり
- 洋
ナオ
- ケセラセラ誰もわからぬ明日のこと
- 蝸
- いく度引いても御籤小吉
- 山
- 社長から息子の嫁に見初められ
- あ
- 夏の終はりが恋の終はりに
- 蝸
- 山法師の白に紛れる昼の月
- あ
- 教授にじやれる柴犬のポチ
- 山
ナウ
- 眠らない都会の人出さまざまに
- あ
- 地下鉄走る地上うららか
- 千
- 城址のお濠を巡る花筏
- 蝸
- リュック背負ひて軟東風の中
- 山
連衆 大島洋子 吉田酔山 岩田蝸舎 岩崎あき子
二十韻「吸ふほどは」
杉本聰 捌
- 吸ふほどは吸はせ溢れ蚊打ちにけり
- 聰
- 竹伐る藪に続く杣道
- 転石
- はらからは栗名月の祝ひとて
- 鄭和
- 眠りから覚め背伸び大きく
- 志保子
ウ
- サンディエゴ十年ぶりに訪ね来し
- 志
- どちらも二人連れのどぎまぎ
- 石
- 歳の差をとかく噂にする世間
- 仝
- 夏の雲雀のかん高き声
- 和
- ピッケルを置きて清水を一気飲み
- 石
- 散り逝きし人偲ぶ石塔
- 和
ナオ
- 衝立の達磨大師の大きな目
- 志
- この酒瓶に毒と書きおけ
- 石
- 寒紅を引いた途端に仾変し
- 和
- 窓の凍月弄るべからず
- 仝
- 堅持する地球は回るてふことを
- 石
- 蘭亭帖の臨書青墨
- 志
ナウ
- 古伊万里をけふはこれぞと二条城
- 石
- さても雨水の頃となりたり
- 和
- 花街道抜けて見上ぐる大鳥居
- 石
- 子らの呼ぶ声春の裏山
- 志
連衆 林転石 髙山鄭和 北龍志保子
二十韻「鐘の音に」
小原濤声捌 捌
- 鐘の音に足早になる秋の暮
- をんみ
- 栗名月の覗く山峡
- 香織
- 対岸の竿に鰍がまた釣れて
- 徹心
- セダンに五人やつと乗り込み
- 一枝
ウ
- 白熱の本番前のリハーサル
- 濤声
- 胸の高鳴り裏返る声
- み
- 校門に隠れて渡す懸想文
- 心
- 商家育ちの如才ないやつ
- 枝
- 葉桜の匂ひほのかに勘定場
- 声
- 蝙蝠の影空を横ぎり
- 心
ナオ
- 少年は鬼ごつこして大喧嘩
- み
- 威厳を保つ髭はいつ剃る
- 声
- お嬢様お手をどうぞと膝を折り
- 枝
- イケメンラガー恋のジャッカル
- み
- 寒月に早く冷めたるコップ酒
- 心
- 総裁選に禊済ませて
- 枝
ナウ
- しめやかに囚人達と読書会
- 声
- 鶯餅をひとりたらふく
- み
- 媼と翁アルバムそつと閉ぢて花
- 枝
- 紋白蝶のふはり窓辺に
- 心
連衆 福澤をんみ 平林香織 佐藤徹心 西田一枝