令和3年4月11日(日)

第二回猫蓑会リモート

二十韻「たましひの」

鈴木了斎 捌
たましひの白蝶ほのとまつはりぬ
了斎
指笛を吹く惜春の野辺
夏近き中華街まで繰り出して
濤声
繕ひあとの刺繍可愛く
あき子
千社札貼るなと貼られ月涼し
あと一話なりアラビアの夜
唐突に女房からのメール来る
尾行調査で溜まる吸殻
裏路地の閉店したるJAZZ喫茶
文庫のニーチェ置き去りにされ
ナオ
諾としか答へ許さぬ独裁者
鍋底さらふ卵雑炊
駆落ちの末に長屋へ流れ着き
紅き唇映ゆる手鏡
満月を呑んでをんなは母となる
土器の壺中に秋色の充ち
ナウ
跳ねまはる角切終えたあとの鹿
賑々しくも唄と太鼓を
海へ向く丘を登りて花見酒
砂浜に寄る波ののどらか
執筆
連衆 石川葵 小原濤声 岩崎あき子

二十韻「春蝉や」

島村暁巳 捌
春蝉や七堂伽藍黙しをり
曉巳
藤の棚まで届く声明
酔山
姉弟紙風船で遊ぶらん
香織
ホットケーキを焼けばふつふつ
円水
月めぐる軌道の線もきはやかに
三世子
障子を洗ふ新妻の背
君と訪ふ辰雄の旧居吾亦紅
別れの曲を今日も練習
千切りの山拵へて夕餉時
熊の刺身は舌で溶かして
ナオ
ボヤかよと消防隊員ぼやきをり
SNSがまたも炎上
誰も彼も綱つけられてゐるやうな
星を降らせて山小屋の月
肌脱の三頭筋に爪を立て
見ぬふりをして猫が妬いてる
ナウ
若き弟子師匠追ひ越し恩返し
琥珀の古酒を皆で呷りて
望遠で狙ひ定めた花万朶
ゆつくり過ぎる耕牛の影
連衆 吉田酔山 平林香織 植田円水 高月三世子

二十韻「初つばめ」

近藤純子 捌
初つばめ瑠璃色の空忘れ得ず
純子
雪解の川の高き水音
太郎
目刺売る公設市の店先に
買物袋いつも持ち行く
敦子
帰るさの派手なアロハに上る月
泡越しに見る素足つややか
次々の浮気は芸の肥しです
裏梯子から消える魔術師
リモートで副業三つ掛け持ちす
あはれ狸の末路知られず
ナオ
山門に葷酒入らずもあぐら鍋
UFO見たとまたもつぶやく
かまつかのやうに操が揺れてゐる
ふたりで戯れた秋の蚊帳吊り
月翳り魑魅魍魎の跋扈して
似顔絵画家がひさぐポンチ絵
ナウ
部下の出すアイデアいつも群を抜き
病が癒えてめざす遠乗り
千年(ちとせ)越え人楽します花大樹
ゆつくり列の動くのどけさ
連衆 功刀太郎 由井健 武井敦子