令和6年4月13日(土)

第二十回猫蓑リモート

二十韻「咲くほどに」

西田荷夕 捌
咲くほどにさみしさつのる馬酔木かな
白山
春泥つけて帰る家猫
千惠子
永き日の野球小僧は嬉しくて
敏枝
好物ばかりけふの弁当
荷夕
屋上の稲荷に月のオフィス街
竜胆似合ふ六尺の嫁
どぶろくをすすめる奴の下心
郵便船は隔週に来る
生成系AIが我が職奪ふ
鸚鵡のまねる飼ひ主の癖
ナオ
爺様の草笛の音は若やいで
古刹の鴟尾に夏の霜おく
松代の大本営は夢と消え
長い廊下を磨く皹
角巻を追へばやつぱり義姉さんだ
キャピキャピ娘ぼくを好きだと
ナオ
寸前でカード詐欺から救はれて
感謝状には墨の黒々
奔放に枝を広げて花盛る
畑鋤くひとに挨拶の児等
連衆 由雄白山 鈴木千惠子 箭内敏枝

二十韻「あをき血の」

鈴木了斎  捌
あをき血の流るる春の蚕かな
了斎
桑の葉束をむしる少年
鄭和
ふらここの順番待ちも楽しげに
由紀子
アニメのキャラになりきつてみる
あき子
月耿と統ぶる海原波静か
点る迎火ぽつりぽつりと
定番の薬味を添へて新豆腐
ウインクよこすスナックのママ
妻からのメール突然震へだし
国道渡る信号が赤
ナオ
地吹雪に記憶のかけら舞つてゐる
暖炉の上に馴鹿の角
琥珀とて水に浮くやつ沈むやつ
嘘もつくけどたまに本音も
芭蕉布に柔肌透ける旅の月
強く抱けば汗のかぐはし
ナウ
いとけなきころの心を今もなほ
校舎に垂れる優勝の幕
からからと氏神の絵馬花を浴び
逃水追うて走る銀輪
連衆 髙山鄭和 馬場由紀子 岩崎あき子

二十韻「五風十雨や」 村山貯水池にて

由井 健  捌
水甕の五風十雨や鴨残る
どこもかしこも草の若やぐ
香織
のどらかなボサノバ聴いて揺り椅子に
志保子
コーヒーカップに描く渦巻
揺子
寒月に稜線新た津軽富士
女猟師は獲物追ひかけ
とびきりの婚約指輪差し出され
高速道路ポルシェ疾走
冥界へ憤怒で招く閻魔王
社長の小言聞いたふりする
ナオ
お出かけは芭蕉布纏ひ下駄の音
アマゾン川にカヌー行きかふ
つけまつ毛三枚重ねランウェイに
温め酒にて裸身ゆらりと
奥座敷亭主ゐぬ間の月今宵
縁の下ではちちろ虫鳴く
ナウ
観覧車一筆書きで描いてみる
夢幻能見て寝落ちする客 
吹き流す天の羽衣花の雲
朱塗りの椀に入れる蛤
連衆 平林香織 北龍志保子 上原揺子