令和7年8月11日(月)

第二十八回リモート連句

ピーマン切る

小原濤声 捌
ピーマン切る浮世へいざと思ひきる
濤声
秋の初風撫ぜる髭面
山間に月天心の高くして
あき子
隣町へと続く電線
純子
暑いねと声の溢るる狭い路地
徹心
ひと潜りして触れる海亀
執筆
手捻りの大皿少し歪ませり
不協和音のジャズの流れて
ことさらに優しい男たぶん嘘
道化師まねて君は綺麗だ
待ちかねた新婚旅行イタリアへ
げに恐ろしき昼の幽霊
外套の襟立て祈る摩崖仏
丹頂鶴の過ぎる月見ゆ
音もなく気動車走る廃村を
漱石全集並ぶ古書店
杉玉を掲げ二代目花宴
春風邪治す薬湯に入る
ナオ
椿餅カフェの格子に光透く
小指の赤い糸を巻取り
五十年尻に敷かれて発酵す
住み心地良き古井戸の底
何もかも洗ひたくなる皐月晴
水平線にヨット消えゆく
白煙を抜けてロケット衛星に
八雲の描く夢の世界へ
お土産は事の欠かない城下町
パートの時給かなり色良し
名月に家族全員陶酔す
締めは定番初なめこ汁
ナウ
涼を運ぶ翔平どこまでも
金の卵と囃されし頃
占ひに上々吉のご宣託
あやとり遊び姉妹楽しげ
花の茣蓙一休みする鼓笛隊
推しの名記す遍路笠行く
由井 健 岩崎あき子 近藤純子 佐藤徹心 

こころは海

上原揺子 捌
秋立つや未だこころは海にあり
千惠子
白波に乗り砕け散る月
鄭和
こぼれ萩一同集ひ宴たけて
白山
環境保全資源回収
揺子
自販機の下に小銭が落ちてゐる
スマホなければ始まらぬ恋
片思ひ天神様へ願掛けに
少子高齢対策も尽き
冬富士に不死の薬の隠されて
蠅凍ててなほ手足すりをる
ナオ
ロボットと明るく変へる近未来
カズレーザーの婚は電撃
愛ゆゑに単身赴任切り上げて
君に似合ふと贈る芭蕉布 
赤瓦さやかに照らす夏の月
コンビニチキン鳶に取られた
ナウ
ろくろ首首長くして思案顔
遠いところにしやぼん玉吹く
散る花は甍かすめて降りそそぎ
翁媼を包む陽炎
髙山鄭和 由雄白山 上原揺子