令和8年4月11日(土)

第三十二回猫蓑リモート

二十韻「群青の青」

馬場由紀子 捌
群青の闇に浮き立つ雪柳
まちこ
甘えるやうに猫の子の声
千惠子
団扇張る縁のおしやべりきりもなし
健
お茶のお供に皿の漬
由紀子
ウ
烏賊釣りの竿の先より月上がり
健
狙つたはずと違ふ男が
千
寝乱れて肩に一筋後れ髪
ま
付喪神ともなるか手鏡
千
運命といふシンフォニー始まりて
健
遠く望める山は眠れる
千
ナオ
着ぶくれて集団下校の丸き列
同
名物電車渡る鉄橋
ま
縁結びパワースポット巡り来て
同
ホロ酔ひ気味に君が命と
健
漱石が月のことなど指南する
千
そそくさと去る秋ぞ悲しき
ま
ナウ
そぞろ寒心静かに磨る茶墨
由
五重塔に光る水煙
健
末代の弥栄願ふ花の席
ま
離れぬ虻の羽音幽けし
由
馬場由紀子 坪井まちこ 鈴木千惠子 由井健

短歌行「まつさらな靴」

山本坊太 捌
弥生尽まつさらな靴磨きけり
坊太
春告鳥の庭に鳴く頃
良子
オレンジを四等分に切り分けて
純子
南の国へ旅の計画
揺子
ウ
漕ぎ出でて独り占めする月の海
良
松手入れする広き肩幅
純
利酒に酔つた振りしてしなだれる
太
礼儀作法を学ぶ教室
揺
バチカンに掏摸の兄弟荒稼ぎ
良
ざんげの値打ち今はいかほど
揺
幸願ひ灯の花を投げ入れて
純
結び昆布を作る母刀自
良
ナオ
初売の掛け声ひびく広小路
揺
気ままに暮らす街の猫たち
太
サイン入り岩合さんの写真集
揺
嘘か誠か彼と同郷
良
逢引きは槐の木と決めてをり
同
軍隊マーチ喇叭響きて
揺
寒の月もつと遠くへアルテミス
太
大晦日まで続く朝練
純
ナウ
漢方薬定期的にと通販で
同
グルテンフリー旨み変はらず
揺
花明り帛紗さばきもあざやかに
同
紙風船を飛ばす少年
良
山本坊太 本屋良子 近藤純子 上原揺子

二十韻「蘖や」

五郎丸照子 捌
蘖や幾千年の屋久の森
照子
聳ゆる岩に風光る頃
香織
立ち乗りのあとのぶらんこ土載せて
遊子
トランペットを朝な夕なに
閑坐
ウ
ロケットで飛行士が見る夏の月
白山
露台でLINE遠距離の恋
照
好きだから後悔なんかするもんか
織
手指の消毒今も忘れず
遊
チャップリン『モダン・タイムス』笑えない
坐
一国締める海峡の紐
山
ナオ
寒犬の瓦礫の山をさまよいて
照
告解室に入る毛衣
織
礼状のつもりで書いたこの手紙
遊
太宰の生家彼と行きたい
坐
永遠の愛を月夜に誓う岸
織
瑠璃の高杯新酒なみなみ
照
ナウ
柔らかく香り楽しむ土瓶蒸し
山
三人掛の椅子に老僧
遊
花篝地頭声を響かせて
坐
ゆっくり歩む春の堤を
山
平林香織 本多遊子 藤原閑坐 由雄白山