Q32

他流と一座する際の心得

最近は、他の結社の方と一座する機会も増えてきましたが、他流の方と巻く時の心得といったものなどありましたらお教えください。

他門と一座する時の心得と言ってもそれにはマナーとメソッドの二つの面があると思います。まず、マナーの面では同門と一座する時のマナーと変ったところはありません。

例の「俳諧無言抄」(延宝二年刊)の「一座の法」(「連句辞典」七頁参照)は、俳諧の時代のものだけに、現代的でない所も多いのですが、人と和し文事を楽しむ事を主眼とする点では同じで、今日の連句の席でも参考になる所が多いのです。

それ故、他門の人を交えた一座では、一門同志の時よりも一層マナーを大切に、一門を代表するつもりで行動して欲しいと思います。

次にメソッドに関してですが、これははっきり言えば、式目運用の方法であります。猫蓑会には猫蓑会の式目(「猫蓑通信」第二十一号所載)があって、皆さんも大体それに準據して作品を巻いておられるのですが、他門にもそれぞれの式目があって、必ずしも全国的に統一したものはないのが実情です。

これは確かに不都合ですが、一面から言うと、連句とは、誰がどのような式目を使って作ろうが自由であり、そこに連句を作る楽しみもあるのですから、それを無視して、全国共通の式目を細かな点まで急速に決めようという動きには同調できないのであります。

猫蓑会式目の中、問題となるものを左に列挙してみますと、

 一、 人情自、人情他、人情自他半、人情無(場)の各打越および縞を嫌う。
 二、 片仮名・アルファベット・数字の打越を嫌う。
 三、 体言止めまたは用言止めの五連続を嫌う。
 四、 挙句は発句に返らぬよう特に注意する。
 五、 短句下七の四三及び二五を嫌う。

などが主たるものであります。この五点は猫蓑連句の伝統があり、また、それなりの理由があって出来たもので、それだけに会の中ではきちんと守られておりますが、他門では異論のあるところもあり、また、無視されているところもあります。

それ故に、他門の方の捌きを受ける場合はその捌きのやり方に従い、衆議判の席でも、猫蓑流を強調して、一座の顰蹙を買わぬよう注意して下さい。

その一座で自分が捌く役になっても、右にのべた五点には注意して、一座の理解と納得のもとに捌かれるようお願い致します。

「猫蓑通信」第32号 平成10(1998)年7月15日刊 より