Q4

人情句の割合、季句の割合

一巻の中で、人情の句と、人情無しの句、また春夏秋冬の季の句の割合は、それぞれ何%くらいが適当でしょうか。お教え下さい。

連句のおもしろさは人情の機微、人生の哀歓をうたうのが中心ですから、たとえば、二十韻二十句の中で、すくなくとも半分以上は、人情の句であってしかるべきでしょう。実際、作品にあたってみますと、「新炭俵」所収の二十韻二十四巻中、人情の句は、最多十六句、最小十三句で、十四句が十巻、十五句が九巻、平均してみると一巻に十四・五句ということになります。ということは、ほぼ人情句三句あるいは四句に対して、人惰無し(場)の句一句という割合で、大休これが一応の目安となるでしょう。人情無し(場)の句は、場面の転換や、気分を一新する時などに非常に有効ですから、活用していただきたいと思います。

歌仙では、「猿蓑」の四歌仙の人情の句の平均は二十四句強です。それに対し、「新炭俵」では「風の二月」が二十四句、「落葉掻く」は二十八句で、大分、ばらつきがありますが、作品は生きているもので、二十八句は多い、二十四句は少いとは一概に言えません。歌仙で二十四句は、二十韻ではほぼ十三句にあたり、この位が限界とも思われますが、たとえば「猿蓑」の「灰汁桶の」の巻など、人情の句は二十二句ですが、これで結構な一巻になっております。

次に、一巻の中での、季句と無季(雑)の句の割合ですが、まず、二十韻は二十句の中に春・夏・秋・冬、四季を全部入れなければなりませんが、その数までは規定してあリません。春三句・夏二句・秋三句・冬二句として、十句を季句とするのがまあ一応の標準でしょう。しかし、時によって、発句が春の場合、匂の花のあたりにまた春が出ると、春季が五句になり、夏・冬の句を一句で捨てるようなことも自由なので、はっきり何句と限定することはできません。

「新炭俵」の二十韻でも、季句の数は最多十二句(春五・夏二・冬二・秋三)、最少九句(冬三・秋三・夏一・春二)で、大体は十句か十一句です。もっとも、この九句という作品は花前が雑になっていて、この点ちょっと異例ですが、代わりに冬が二回出て計三句になっているのです。だから、最小は埋論的には春三・夏一・秋三・冬一の八句でしょう。

「猫蓑通信」第4号 平成3(1991)年7月15日刊 より