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猫蓑会式目

連句を付け進めて行く上で守るべきルールを
式目と云います。

一巻の流れを停滞させず、一句ごとに前に進み、
次々に新たな発想、境地を引き出していくための
手がかりになるのが式目です。

この手がかりを共有することで、
複数の人間の共同による創造性の発揮ということが
円滑にできるようになります。

 
猫蓑会式目の整理
                           東 明雅

 
従来、猫蓑会には式目は存在したが、それを整理した式目表とでも言うべきものはなかった。唯一、「二十韻季題配置表」のカードの裏にある「句数式付去嫌」・「式目歌」はその代用であったが、近頃、その不備を痛感するようになった。

たとえば、「式目歌」の第一首「衣季や竹田の船路夢泪月松枕五句隔べし」などは、古い連歌の時代からの伝統を残したものであるが、現代人には意味も理由も分からぬだろう。

それで、現在猫蓑会で使っている式目類を整理して一覧表にしたが、下の通りとなった。

式目を新しく制定しようなんて大それた考えは毛頭ない。従来我々がやって来た方法を整理したまでである。大方のご参考になれば幸いである。
 
猫蓑会式目
 
一 心得
  式目は翁の「歌仙は三十六歩なり。一歩も後に帰る心なし」を旨とし、すべての事象が輪廻にならぬよう注意する。
   
二 句数
 1  句数は春秋三句より五句(普通三句)、夏冬一句より三句(普通二句)とし、季戻りを嫌う。
 2 恋句は二句より五句続く。一句で捨てない。
   
三 去嫌
 1 同季春秋は五句去り、夏冬は二句去り。その他、月・夢・涙など特に印象の強い文字は五句去り。
 2 同字・神祇・釈教・恋・無常・述懐・懐旧・妖怪・病体・時分・夜分は三句去り、その他の題材は二句去りであるが、なるべく同じような題材は離して用いるようにする。
 3 人情自、人情他、人情自他半、人情無(場)の各打越および縞(編注1)を嫌う。
 4 片仮名・アルファベット・数字の打越を嫌う。
   
四 一巻の構成
 1 発句は当季とし、切字を入れる。
 2 脇句は発句と同季、同時刻、同場所とし、体言止めが普通。
 3 第三は「て、に、にて、らん、もなし」止めが普通。
 4 発句使用字(月、花を除く)、及び恋の字は一巻再出を嫌う。
 5 発句以外に切字「や、かな」を嫌う(ただし「補説」参照)。
 6 表に神祇、釈教、恋、無常、述懐、懐旧、妖怪、病体、人名、地名を嫌う。但し発句はこの限りではない。
 7 月の定座はオ五、ウ七、ナオ十一(二十韻ではウ一、ナオ五)とし、場合によって引き上げることもこぼすことも自由であるが素秋(編注2)を嫌う。
 8 花の定座はウラ十一、ナウ五(二十韻ではナウ三)とし、引き上げることはあってもこぼさない。
 9 恋は一巻に必ず出す。ウラおよびナオにそれぞれ一回出すのが普通である。二十韻ではどちらか一回でもよい。
 10 体言止めまたは用言止めの五連続(編注3)を嫌う。
 11 挙句は発句に返らぬよう特に注意する。
   
五 韻律
  短句下七の四三および二五を嫌う。
   
六 仮名遣
  歴史的仮名遣・現代仮名遣どちらでもよいが、その混用を嫌う。

       「猫蓑通信」第21号・平成7(1995)年10月15日刊より
 

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編注1 縞(しま)
 
「猫蓑会式目」三の3に、「人情自、人情他、人情自他半、人情無の各打越」と列挙した後に「及び縞を嫌う」と書いてあるため、往々にして、「人情自、人情他」などを二句ずつ繰り返す(自・自・他・他・自・自・など)ことも「縞」になると読み違え、禁忌とする人がいるが、これはまちがい。以下の引用の通り、「縞」とはあくまでも人情句と人情なしの句を二句ずつ交互に繰り返すことを言う。また、たとえ繰り返す人情句の種類がちがっていても(場・場・自・他・場・場・他・半・など)、二句置きに人情句と場の句が二句ずつ繰り返せば縞である。

「縞(しま):人情の句は二句以上続けねばならず、人情なし(場)の句は二句までは続けてもよい。それで人情の句と人情なし(場)の句を互いに二句ずつ続けることもできるが、これを縞といって嫌う。たとえばA(人情)・B(人情)・C(場)・D(場)・E(人情)・F(人情)、このような形を繰り返すのであるが、作品に力がなくなりおもしろさがなくなるためである。

〔参考〕『或は人情二句・景気二句と縞筋を織たる如く、一巻を連綿する事あり。一巻おだやかなりといへども、巻中に曲折ある事なし。尤景気の句出ば是非二句対して、次に人情・起情の句を待べし。これを俗に延す法といふ。又人情二句対して、次三句にわたる時は、彼向附の法をもて自他を分ち、猶人事四句も五句も続けゆくべし。さほどの曲節を用ひずんば、一巻の眼目とする所なきに似たり。既古集に人情五六句続きたる巻有。考見るべし』
(『附合てびき蔓』高井几董)」

以上、『連句辞典』(東明雅・杉内徒司・大畑健治編)p66 より
 
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編注2 素秋(すあき)
 
「素秋(すあき):秋の句は三句から五句まで続くが、その秋の句が続いた中に「月」が詠まれていないものをいい、連句では嫌う。そのために『月の句』を引き上げたりして素秋にならないように作するのがよい。」
『連句辞典』p77

なお、春の句の一連のなかに花の句が無いことを「素春」というが、素秋とちがって素春は禁忌ではない。

「素春(すはる):春の句は三句から五句まで続けるが、その中に花の句の詠まれていないものをいう。発句が春の句の場合は花の句をなかなか引き上げることができず、素春になることが多い。素秋(秋三句−五句の中に月を詠まぬこと)は忌まれるが素春はかまわないとされている。これと似た言葉に春句のなかに恋のないのを平春、秋句の中に恋句のないのを平秋という。」
『連句辞典』p78
 
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編注3 五連続
 
この項目は、約三年後の「猫蓑通信」第32号・平成10(1998)年7月刊掲載(p12)の、東明雅筆「連句Q&A・32」にもこのままの文言で引用されている。しかし更に四年後、同第49号・平成14(2002)年10月刊掲載(p1)の、同じく東明雅筆「文音と校合」では、「かな止め・漢字止めがそれぞれ五句以上続かないようにする」と改められている。この時点で、新宿朝日カルチャーセンター連句入門講座でもそのように教えておられた。

この項目はもともと、文法的な事柄よりもむしろ、主として「巻き面(づら)」つまり一巻の視覚的印象に注目してのことであり、「体言」「用言」も文法用語としてはそれぞれ曖昧な要素を残す概念で、また助詞などはどちらにも属さないなど、体言止め、用言止めと言うよりもむしろ、漢字止め、仮名止めの連続を戒めるとしたほうがその趣旨が明快であるとのことで、このように改められたようである。ただし、単調さを避けるという点では、体言止めの多連続も避けることができればそれに越したことはないと言えるだろう。


 

 
平句の切字について(猫蓑会式目補説)
                           東 明雅

 
前号(「猫蓑通信」第21号)に掲載した「猫蓑会式目の整理」の中、「四・一巻の構成」の5で――発句以外に切宇「や・かな」を嫌う――と述べたが、言葉が足りず、誤解を受ける可能性が多いので、ここに補説して、私の真意を述べたいと思う。

誤解を恐れる第一は、「や」・「かな」以外の切字でも、一切平句に用いてはならぬ、あるいは用いない方がよいと錯覚する向きも多いのではなかろうかということであるが、そのようなことは決して言ってないのであって、芭蕉関係の作品を調べても、たとえば、「けり」とか「なり」とかいう切字は、比較的頻繁に平句に使われており、芭蕉が推奨した俳論書「俳諧無言抄」などには、四句目の作り方として――四句目ぶりとて、「也」・「けり」などの軽き留りにて、ふしなきをこのむ也――とあって、切字のうち、特に「なり」・「けり」などは軽い留字として積極的にすすめているものもある位である。もちろん、四句目以外の平句に「なり」・「けり」などを用いることも決して禁じられてはいない。流石に、「や」・「かな」などの切字は、芭蕉関係の作品中、平句に用いられることはすくない。しかし、探せばいくつかの例を見ることはできる。

  1 初はなの世と(よめり)のいかめしく
  2 市に出てしばし心をしはすかな
  3 やぶ入の嫁送らんけふの雨
  4 妹がり溝に穂蓼の生茂り
  5 かげろふ海手の花の盛なり
  6 一株の薄は物に似たるかな

などは、これらの切字の働きによって二句一章の体となり、句の中の季語と相俟って完全に一つの美術的世界を作り出し、殆ど発句と同じ相を呈している。これでは連句では困るのである。そもそも連句は前句と付句両句の付け合わせによって、一つの芸術的世界を創り出すものであるが、その前句あるいは付句が、その一句の中ですでに完璧な世界を創り出しているとするならば、さらにその句につける事は蛇足であり、無意味であろう。これでは困るのであって、私が平句に「や」・「かな」を嫌った理由はここに存するのである。

しかしながら、同じく「や」・「かな」を使っても、発句のような完璧な世界を創り出さないものもある。

  7 おかざき矢矧の橋の長きかな
  8 きぬぎぬ烏帽子置床忘れたり
  9 面白の遊女の秋のよすがら

などは、あるいは一句の中に季語がない為、あるいは季語はあっても一句の中に一種の終助詞的役目だけしか示さない為でもある。

そして、以上はみな平句の中でも長句のみについて述べたのであるが、短句では発句みたいになる可能性がない為か、より自由に「や」・「かな」が用いられている。

  10 生鯛あがる浦の春
  11 さても鳴きたるほととぎす
  12 片はげ山に月を見るかな
  13 いざりふびんおば捨の月
  14 奈良はやっぱり八重桜かな

式目を整理する時、各項をなるべく簡潔にしたいという希望はあったが、それにしても言葉足らずの感は免れない。畏友片山多加夫氏は――発句以外に切字「や・かな」を嫌う。但し、切字の働きのない「や・かな」は一巻の飾りとして一句程度許される――という試案を示された。それでもよいと思うが、こうなれば、むしろ「四・一巻の構成」の5の全体を削除し、この件は作者各人の判断による処置に委せた方が穏当かとも考えている次第である。

    「猫蓑通信」第22号・平成8(1996)年1月15日刊より


 

 
句数と去嫌表
 
 句数  一句  一〜二句  一〜三句  二〜五句  三〜五句
 去嫌          
 二句去    人倫
 名所
 国名
 天象
 生類
 植物
 夏季
 冬季
   
 三句去  同字
 =同じ漢字
 時分
 夜分
 旅
 居所
 降物
 聳物
 神祇
 釈教
 無常
 述懐
 懐旧
 山類
 水辺
 恋  
 五句去  月・田・煙
 夢・竹・舟
 衣・涙・松
       春季
 秋季
『連句・俳句季語辞典「十七季」』(東明雅・丹下博之・佛渕健悟)p557より
 
句数とは、同じ分類に属する句を何句まで続けるかということ。去嫌とは、同じ分類に属する句が再出するまでに、何句去る(間に別の分類の句を挟む)必要があるかということ。

たとえば、春季の句は少なくとも三句続けねばならず、最大五句まで続けることができる。一旦春季を離れたら、他季または無季の句を間に五句挟まないと、次に春季の句を詠むことはできない。

この句数と去嫌はあくまで原則で、他の規則との関係で例外が出てくることもある。たとえば春季は三句以上だが、挙句(最後の句)の一句前ではじめて春が出た場合は、その句と挙句と春二句で終わってよい。ただし、挙句はその前句と同調するのが原則なので、挙句の前が無季なら挙句も無季になるため、挙句で初めて春が出て、春がその一句だけで終わるということはない。また、挙句の前までで既に春が五句続いている場合も、挙句一句だけ無季や異季にすることなく、挙句も春として、春六句にする。これらは他の季についても同様。


 

 
句材の分類
  
人倫 じんりん 人間の肢体・地位身分・職業・家族親族・言動・嗜好など
名所 めいしょ 景色や古跡、歌枕などで有名な地名
国名 こくめい 伊勢・武蔵など昔の国名、日本、アメリカなど現在の国名
地名 ちめい 東京・日比谷・パリ・シャンゼリゼなど土地の名称
天象 てんしょう 月・日・星などの天体および気象現象
生類 しょうるい 動物に関するもの。獣類・鳥類・魚類・虫類など
植物 うえもの 草類(蘭・菊など)、木類(松・梅など)
食物 たべもの 飲むものと食べるもの。動植物でも食用に調理されたものは食物として扱われる
     
時分 じぶん 昼夜・朝・暮など一日の時間の推移、時間帯に関するもの
夜分 やぶん 夕・宵・夜更けなどのほか、夜勤・夜学・夜なべなど
たび 旅に関する言葉や、一句として旅を意味するもの
居所 きょしょ 人の住居に関するもの。門・窓・玄関・隣・宿・庭・垣など
降物 ふりもの 気象現象のうち、雨・雪・雹・霰・霙・霜・露など、天から降ってくるもの
聳物 そびきもの 気象現象のうち、雲・霞・霧・煙など、空中でたなびいたり横に拡がったりするもの
     
神祇 じんぎ 天神地神の意。社・鳥居・神楽・祭・氏神など神道に関するもの
釈教 しゃっきょう 仏名・寺名・僧・仏事・梵鐘など仏教に関するもの
宗教 しゅうきょう 仏教、神道のほか、キリスト教、回教などの宗教信仰に関するもの
無常 むじょう 死・葬送などに関するもの
述懐 じゅっかい 老いや不遇を嘆く気持ち
懐旧 かいきゅう 昔を懐かしむ気持ち
病体 びょうたい 病気の状態あるいは病名を詠んだもの
老体 ろうたい 老いに関するもの。老いる・老人・祖父・祖母・爺婆・八十路など
山類 さんるい 山・岡・麓・高根など山とその周辺に関するもの
水辺 すいへん 海・川・湖・沖など、水に関する場所
妖怪 ようかい 雪女郎・河童・妖精などの類
     
こい 恋人・恋文・睦言・結婚・化粧など
景物 けいぶつ 四季折々に愛ではやされるもの。花・時鳥・月・雪を四箇の景物、紅葉を加えたものを五箇の景物という

『連句・俳句季語辞典「十七季」』『連句辞典』など参照
 

 
 
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