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東明雅の連句Q&A
 

 
2・恋句の出し方
歌仙でも二十韻でも、それぞれの進行表を見ますと恋句を出す場所が示してありますが、これ以外の場所、例えば表や名残の裏に出してはいけないのかどうか、またその理由についてお教え下さい。
 

 
歌仙及び二十韻の季題配置表には、それぞれ、裏と名残の表に恋句を出すようになっていますが、これはまったくの初心の人に対して一つの例をあげたまでで、決してこの通りにせよというわけではありません。誰もがまったく同じ場所に恋句を出すということになれば、それこそ千篇一律で、おもしろ味も新しみもないものになってしまうでしょう。

式目にはずれない限り、どこにでも恋句は出せるものですが、この場合の式目とは、

1・歌仙でも二十韻でも一巻の中に必ず一ケ所は恋の句を出す  こと。
2・表六句には神祇・釈教・恋・無常その他印象の強いものを  遠慮する。
3・恋句は二句以上、五句まで続けることができ、三句去りで  ある。

という、この三つであります。

だから、まず表六句には恋句を出さぬのが普通です。けれども、これにも例外があって、

4・発句だけに限っては神祇・釈教・恋・無常その他表六句に  禁ずるものを出してもよい。
5・発句にもし恋句が出たら、脇句は必ずこれに応じて恋句で  受けなければならない。
6・その場合、第三になるとはっきり恋の意から転じなければ  ならない。

という式目があります。

だから、歌仙でも二十韻でも、発句に恋の句が出たら、脇の句でもそれを受けて恋の句を出さねばなりません。

しかし、このように表六句に恋句が出ることは極めて稀で、大体は裏の二句目あたりから出るのが普通でしょう。と言うのは、裏の折立から恋句を出すのを、昔の人は待兼の恋と言って嫌ったからです。もっとも、現代の連句ではこれを禁じておりません。

それでもし、八句目、九句目に恋句が出たら、次の恋句は三句去りで十三句・十四句目、次はまた三句離れて十八句・十九句目、このようにして、二十三句・二十四句目、二十八句目・二十九句日、三十三句目・三十四句目と、歌仙では六回は恋句を出すことができるわけですが、こんなに恋句ばかりを出すと飽くので、普通は名残の裏はなるべく遠慮し、大体、裏一ケ所、名残の表に一ケ所、計ニケ所位出すのがよいとされておりますが、時と場合によっては、三、四ケ所出した例、また、名残の裏にも恋句を出した例が、芭蕉の作品にもあります。

二十韻も大体、以上に準じて考えてよいでしょう。二十韻でも恋句は、最大、四回は出せますが、普通は裏と名残の表に一回ずつが最も妥当と申せましょう。しかも、この一方を欠いても決して異常ではありません。とに角一巻の中に一ケ所恋句が出ておればそれでも式目には反しないのであります。
 

●「猫蓑通信」第2号 平成3(1991)年1月15日刊 より

 
 
 
 
 
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